学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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園長 安 家 周 一
あけぼの幼稚園の園庭は決して広いとは言えませんが全国から来訪された見学者が言うにはとても不思議な庭なんだそうです。あけぼの幼稚園は安家茂美・周子が自宅の敷地を利用して創立しました。当時は現在南楓亭が建っている南園庭は隣地の畑地で、北側の敷地だけで手狭でした。父が亡くなった翌年平成3年、隣地が売却されると聞き及び、苦渋の選択でしたが購入を決定しました。時代はバブルの最終局面で、1坪540万円、110坪ほどですが膨大な借入金を抱え、新米園長のスタートを切ることになりました。借入金総額は数億円に上り、運営資金にも事欠く状態でした。子ども達が遊ぶ園庭を整備するため高額な園庭遊具を購入するわけにもいかないことから、川勝さん比呂志さん当時の男性教員にも協力してもらいながら手作りでさまざまな遊具を考案しました。
私の父も大工仕事が好きでした。思い出すのは、私が小学校3年生くらいの時です。当時各家庭の道ばたにおかれるゴミ箱はコンクリート製で市販されていました。うちは幼稚園でかなり大型の物が欲しいということになり、手作りすることになり手伝いました。型枠を作り中に太い針金を入れてコンクリートを流し込み乾かします。ボルト止めをするべく穴を確保したり、結構細かな作業でした。できあがり、いざ組み立て完成したのは良かったのですが、重すぎて持ち上がらないのです。父が苦笑していたことを思い出します。
そのような経験を小さい頃からさせてもらったおかげで、「何でも自分達で作る」事が当たり前になっていました。鉄棒の柱を入れ替える、ジャングルジムの上に小屋を造作する、ケヤキを奈良県北山村から運んできて木製ジャングルジムを造る、飼育小屋の製作、お父さん達と協力してよっとりでの製作、トトロの家、ツリーハウスやよそで見た三角形のブランコを真似て造るなど、園庭のほとんどが手作りの物です。資金がなかったことも大きな原因ですが、キャラクターが目立つカラフルな遊具ではなく木製遊具が園の特徴となりました。子ども達の動きを観察しながら、ぶら下がる・くぐる・走る・滑るなどの動詞の数がいくつあるのかを考え環境を整える努力を続けている訳です。
又、以前より園には大きな砂場があり、子ども達は水道からせっせと水を運び泥遊びに昂じます。水道代に悲鳴を上げていました。25年前、思い立って幼少の頃に水だまりの記憶があったところに、男手4~5人で直径1,5㍍、深さ5㍍の穴をスコップで手堀りし、中に直径90センチのコンクリート菅をチェーンブロックで吊し積み重ねて仕込みました。フタは父と造った経験を元に型枠を造り針金を入れて作成しました。これが現在まで砂場に水を供給し続けている井戸です。水道料金は半減し、存分に水を使うことが出来ています。
要は大きな借入金で資金がなかったことが功を奏し、さまざまな手作り遊具が登場したわけです。「教育は不便なるがよし」自由学園創設者の羽仁吉一先生が話された言葉です。不便(資金不足?)であることが人間の知恵を引き出し、手作業でさまざまな物を創り出す原動力になっていたことになります。便利で快適で満ち足りた時代に生きる子ども達に、意図的に不便や不足、不快、不潔の環境を与えることは、将来に亘る知恵者になるために必要不可欠な環境だと考える根拠にもなっています。
いつまでも未完成な園庭です。これからも完成に向けて着々と変化し続けることでしょう。楽しみでワクワクします。