学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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学)あけぼの学園 安家周一
■1-保育一体化の経緯
当園は昭和29年4月創立です。創設者安家茂美・周子は、当初より、女性の生き方を応援すべく、保育所の創設を考えていましたが、幼稚園は私立、保育所は市立という豊中市当局の方針により、とりあえず私立幼稚園の設立を実行しました。創立当初より園内に給食設備を整えるなど、保育所設立への意欲の片鱗が伺えます。
昭和50年には、近未来の待機児増大による保育所不足を予見し、市当局と協議を重ね、幼稚園空き教室利用の豊中市認定「簡易保育所」を市内10園ほどの仲間と創設します。幼稚園設置者だけではなく、協会の片隅や病院の空き地などにも設立されました。園の整備や、給食などの設備不備などで、認可保育所のような保育環境が整えられない園もあったため、保育料は認可園比70%位に押さえられ、当時の措置費は80%程の支弁で運営していました。当時の保護者は、保育料が安いと言うことで、結構簡易保育所を利用される方も多く、園の中に、短時間保育児と長時間保育児が共存するという、まさしく、現在審議中の施設が37年も前に豊中には実現していたことになります。
それ以降、大阪府私学審議会において小委員会を設置し、熟議の末、学校法人立保育所の設置が許可され、その後国による認定こども園法の施行により、全国各地の幼保連携型・幼稚園型・保育所型乳幼児保育施設が出現したわけです。
■2-幼保一体施設から幼保連携認定こども園へ
幼保一体施設の頃は、幼稚園の保護者は幼稚園へ入園し、保育所入園希望者は役所に入所申請する方式でした。一つの施設内に文科・厚労の制度、公金や設備、職員や園児保護者が混じり合うという統合状態がながく続きます。保護者同士もお互い混じり合おうとせず、幼稚園母の会組織なども、昼間のイベントに、はなから保育所保護者は出席できないと決めつけ、計画をするなど、園内で行き違いや諍いもありました。
平成24年4月、豊中市初の認定子ども園に改組しました。これを機会に、保育所への入所も幼稚園同様当園が責任を持ち、今まで優遇処置であった他の保育所への「転所優待」も無くなりました。選んで入園して頂くというある意味保護者と対等な関係の成立です。従来の保育所は、措置制度の延長線上でいろいろな判断が成されており、救貧・困窮家庭対策としては一定の意義はありますが、保護者と園が決して対等な関係ではないと感じていました。しかし直接入所のための事務職員を増員しなければならず、収支のバランスが崩れ、運営はしんどい状況を余儀なくされます。
保護者も人によっては保育所の入所が「権利である」と捉えることを誤解して、「私の利権」と考える傾向の方もあり、私立幼稚園との対比で考えると、莫大な公費の投入と相まって理不尽を感じていました。その観点からもすこしはすっきりしたと感じます。
■3-工夫したことや改善点
1-幼稚園は弁当、保育園は給食
幼稚園は週に2回弁当日が設定されています。保育園は基本的に毎日給食です。当園では22年前から、年中・長保育園在籍児は9時~14時までは幼稚園在籍児のクラスで生活します。14時以降は保育園に戻り、4・5歳混合クラスででゆったり生活し夕方帰宅します。その関係から、保育園在籍児の弁当をどうするか、かなり苦労しました。当初、保育園在籍児の母親で、「弁当を作ってもいいです」と言われていた方も、他の保護者から嫌な顔をされて撤回されました。「面倒くさい」が一因ですが、親によっては、「運営費の中に給食の費用が入っているのに、なんで自費で弁当を…」という方もおられます。
改善策として、職員で検討を重ね、家から空の弁当箱を持参して頂き、それに給食室で弁当を詰め、クラスや園外保育の場所に配達すると言うアイディアです。職員側に苦労はかなりありますが、保護者の納得を得ることが出来ました。
2-年中のクラス懇談会
年中から合同で保育する関係上、保護者同士が親しくなる必要があります。幼稚園保護者は年少からご一緒な方がほとんどですので、引き続き関係が進展しますが、交流がなかった保育園在籍の保護者は同クラスになることについて、特に保護者間の関係についてかなり構えられます。そのようなことから、年中児1学期クラス懇談会は土曜日に開催し、有職保護者にも出席しやすい機会とします。それをきっかけに、うち解ける姿もあり、嬉しく感じます。
3-長時間保育児の増加
認定こども園に改組し一体的な運営を始めたところ、幼稚園入園児の中に、他の保育所を利用していた方や、長時間保育希望の入園希望が極端に増えました。保育園在籍ですと、それなりの運営費が支弁されますが、幼稚園の在籍児については、市からの公的な補助はなく、国制度の預かり保育補助が府経由で少額あるだけで、保護者負担と、園負担でまかなうことになります。本来であれば市当局が予算化するべき費用であるにもかかわらず、市当局も、知って知らずか対岸の火事状態で無関心で関与はありません。これは縦割り制度の大きな矛盾点です。
■4-これからのこと
上記の工夫はごく一部で、職員も数限りない試行錯誤を繰り返し、気を遣って運営に挑んでいます。頭が下がります。制度が一体の方向に向かっていることについては一定評価しますが、日本に住む乳幼児が、どのような環境で育つことが目指されているのかが見えないことに不安を覚えます。
12時間保育を余儀なくされている子どもも多く存在します。施設の中に12時間とどまることを強要されているわけですから、子どもによっては苦痛を感じる子どもが居ても不思議ではありません。しかし、子どもはそのことについて「保育時間が長すぎる!!」と訴えることはしません。
親の働き方や長時間労働については、結果的に議論されませんでした。ワーキングの議論を傍聴しているときも、保育所の第1義の利用者は「親」である旨の発言を聞き、唖然としました。間違えてもらっては困ります。第1義利用者は「子ども」です。このまま保育時間が延びたり、病気の時も休めないなどの現実が存続することには異議を唱えたいと思います。
「社会で子育て」は一定理解します。しかし、社会の前に親による子育てが第1義です。それを社会があたたかく受け止めるための制度を用意する事が肝要で、その面から日本はOECD諸国と比較しても大きく遅れていると言わざるを得ません。当事者として、力不足を感じます。