周一ぶつぶつ

2012.09.13
胃年齢の関わりは子どものメタ認知が育つ

園長 安家周一
以前より海外の幼児教育施設を視察する機会が多くあります。人種、言語、宗教、気候、国民性などが違い、一概にすぐ参考にならないものもありますが、自分の保育を客観視するにはよい材料になってきました。7年前に訪問したドイツの幼稚園は、園児数80人位の園で、3クラスの異年齢縦割り保育の園でした。驚いたことにその先生が就職した27年前から同じ保育室で保育を続け、3~5歳の子どもたち25人ほどが少しずつ入れ替わりながら毎年同じ担任と生活していました。調度品も先生の好みで決められ、観葉植物が茂り、妙に心地よい空間でした。
園長先生に「ドイツではなぜ異年齢の構成なのですか?」と聞くと、何でそんな質問するわけ?と言いたげな顔です。「日本ではきょうだいは多いのですか?」と逆質問され、「2人がふつうです」と応えると、それが答えですとの返事でした。
■ごまめルール
私たちが小さい頃はきょうだい4~5人の家庭は珍しくありませんでした。きょうだいは毎日よく遊びます。ババ抜きをしたとき3歳位の弟妹が参加していると「ごまめ」とルールを適用して参加させることが多くありました。その子がカードをひくときには、わざとババを高くして、目立つようにし、引くことがないように暗に伝えたりします。「ごまめルール」です。ゲームをおもしろくするための知恵でした。近くの空き地や原っぱにそのような光景がそこあそこでありました。
■メタ認知が鍛えられた
このように、自分たちが楽しんでいるゲームの進行を、構成メンバー全員で楽しむためのルールをその場に合わせて工夫することは日常茶飯のことです。このことを成し遂げる脳の働きを「メタ認知=前頭葉の働き」と呼ぶのだそうです。(茂木健一郎氏弁)自分たちの遊びを客観的にとらえ、構成メンバーによって自分たちでルールを調整して作り変えることを、きょうだい間や地域の子ども集団で経験することができたわけです。この力こそ社会で生活するときにとても必要な力です。電子ゲームが低年齢の子どもによくないと言われるのは、ゲームはルールが決まっていて、自分でルールを変えることができないことが原因なのです。メタ認知を鍛えるには、昼間の遊ぶことのできる時間を、技量や認知力、価値観など様々な異年齢の仲間と能動的な遊びを繰り広げることことが大切だといわれる理由なのです。
■日本では今まさにその結末があふれている
日本では一般的に同年齢教育・保育です。効率はいいのかもしれませんが、帰宅後、異年齢ガキ集団あそびが存在した時代はいざ知らず、習い事などでほとんど遊ぶ時間がない現代では、幼稚園や保育園の異年齢集団がどれだけ大切かが判ります。集団で育ってほしい力であるメタ認知が育っていない人たちによって構成された社会は、想像力や客観的視点が不足し、色々な能力を生かすことのできない一律な価値観が支配する社会が実現してしまいます。
大津市の中学生いじめ自殺事件が大きく報道されています。この中学校は近年文科省いじめの研究指定校だったと聞きました。社会に蔓延する、傍若無人な振る舞いも、電車内の女性の化粧も、メタ認知が不足しているということから解き明かすことができます。
過去には意識せずに自然に育った力が、地域や家庭で不足する時代には、幼稚園・保育園・小学校などの保育・教育施設が意図的に機能する必要があります。

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