周一ぶつぶつ

2015.05.07
子どもの新制度+子育て支援新制度 =子ども・子育て支援新制度 (日本保育学会会報寄稿文)

 平成27年4月、新制度が始まる。多くの時間を費やして、学者・団体関係者・保護者・官僚など、幼児教育・保育界の英知を結集し創られた制度である。多岐にわたる議論の連続でさぞ大変であったと察せられ、感謝したい。私達現場関係者は新たなる制度を心待ちにしていた。長い間縦割り行政を主なる理由として、法律、税金のかけ方、保育者の免許・資格、申し込み方法、最低基準・設置基準などべつで、保護者も保育者も混乱し、養成期間の負担も尋常ではなかった。機能的には同じような施設で、なぜこのような違いが生じるのかわからない状態が放置され時間が経過した。

 平成27年4月より待ちに待った「子ども・子育て支援新制度」が施行される。この制度は小学校就学前の子どもの諸施策を充実発展させることに加えて、保護者の子育てへの支援を充実させることの二つを追い求める画期的な制度である。

新制度の大きな目的の一つは、「子どもが育つ環境を整え直し、人生の基礎を培う人らしい生き方を保障すること」にある。保育者一人あたりの子どもの数が多いことや施設に滞在する時間が長時間になるなど先進諸国の中でも劣悪な環境を具体的に改善することが期待される。また永い間続いてきた幼稚園文化と保育所文化を融合させることである。

次が子育て支援制度の充実である。子育ての援助が受けにくく孤立して子どもを育てる若年層家庭に光を当て、負担を軽減させる施策が急がれる。加えて保育所に入所することが難しい「待機児問題」については多額の基金を利用し量的拡大が図られている。

それ以外の問題点を示すとすれば・・・

1/施設型給付では職員配置基準が適用され、最長12~13時間にも及ぶ保育を複数の担当者が保育する。加配があるとはいえ、特に2・3号子どもが増加すると現在の保育所職員と同様に休憩時間以外は子どもに向き合う勤務となる可能性が大である。幼稚園教諭の放課後は記録や打ち合わせ、教材研究、研修などに充当するのと違い、良質な教育環境を維持するのは難しい。小学校等の教諭は「放課後児童クラブ」の担当はしない。

2/日本の豊かな食文化である家庭からの弁当持参は大切な幼稚園文化といっても良い。新制度では学級編成が1・2号児混在である。2号は基本的に給食を供給する制度であり、同クラスで家庭の弁当と給食を混在させることは子どもの心情を察するに厳しく、教育的観点からも望ましいとは言えない。弁当は保護者から子どもへのメッセージ性が強く子どもはとても喜ぶ。新制度では乳幼児期から中学校に至るまで昼食は給食ということになり家庭の食文化にまで影響が及ぶ可能性がある。丁寧な説明と教育的意義を説きながら納得を得て、園によって弁当日など選択が許されるような制度にすべきである。

3/女性が社会で自分の能力を発揮することは至極当然のことである。しかし現代の男性並に働くことで豊かな家庭生活が保障されるのだろうか?日本人の労働について量と質を根本から見直さなければ、豊かな家庭生活を営むことは難しい。豊かな家庭で子どもは豊かに育つ。この議論も置き去りにされている。

上記以外にも様々な問題点を感じている。当園は平成27年一時避難的に認定を返上する。平成26年12月現在未だ保育料・公定価格は決定されず不明。このままでは保護者、事業者双方は混乱し永年培った社会からの信頼を失墜する可能性もある。

しかし希望を失ってはいない。新制度の始まりとともに問題点を一つ一つ整理し、さまざまな分野の方々と再構築に取り組みたい。また子どもの価値と育ちを中心に豊かな家庭生活が営めるような日本の育児・保育環境をめざしたい。

既得権益や縄張りではなく、英知を結集する時である。

 

 

 

ページの
先頭へ

学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会