学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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「安物買いの銭失い」
魔法使いのおばあさんは絨毯ではなく何故ホウキに乗っているのか、長い間不思議に思っていました。先日、保育室の網戸の修繕で悪戦苦闘していると、なぜか男の子たちが5人くらいやってきて、「何やってんのン?」「これ何?」などと口々に問いかけ、近づき道具に触ります。そのうち覗き込んでいる頭は、ぐいぐい私の頭とあたり、押しのける勢いで入り込んできます。これ何に使うの?コールはすごく、その好奇心には驚くほどです。
社会を見回してみると、子どもたちは大人が工具を使い、物を作ったり修繕したりする姿を身近に見る機会がほとんどなくなっていることに気づきます。工事現場は安全鋼板で囲われ内部をのぞき見ることはできなくなっていますし、家庭で魚を一匹買ってきて、出刃包丁で頭を落とし、3枚におろす作業など見ることも稀でしょう。
私たちの小さい時の家事や大人の掃除の様子などは、8畳の部屋に濡らした新聞をちぎって部屋にまき散らし、箒で掃きとるとほこりは新聞にからめ取られ、それを塵取りでさっさとまとめ処理されます。子どもからみると、大人の作業は魔法のように見え、不思議に見えるものだったのです。しかし大人を真似て自分でやってみても、大人のようにはいかないことにも気づきます。
自分の周りでなされる大人の仕事は、子どもにとってすごく魅力的に映り、あこがれの対象でした。自分も大きくなったら、お父さんやお母さんのように魔法が使いたいと思ったことでしょう。
現代では100均に代表されるように、安価で便利で、簡単に使える便利なものに入れ替わってしまい、家事の負担や仕事もそんなに技術や力を要しなくなりました。便利な世の中になったのと引き換えに、私たちの手は不器用になり、賢さを失ってし待っているとも言えます。文明の進捗によって便利を追求し続けることは、人間の能力が衰えに向かうことを意味します。
過去の日本は物つくりの国でした。農機具はもとより、外国の商品を模して、寸分たがわないものを安価で輸出することでずいぶん稼ぎました。しかし、現在そのビジネスパターンは発展途上国や人口のひしめく大国に譲り、商品は外国で安価に作られ、驚くほど安価で売られています。100均の商品の山には驚かされます。
「安物買いの銭失い」古いことわざですが、日本人は良い道具を大切に長く使うことを価値としてきた民族です。未来の地球環境を考えるとき、どちらかの国のような大量生産・大量消費は、未来を生きる子どもたちからの預かり物である地球を護ることは難しくなることは自明の理です。現在を生きる大人の理性が問われています。