学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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「ニューロ・ダイバーシティ、多難な未来社会を共生のための葛藤経験」
温暖化によるとみられる農作物の不作や海産物の不漁、氷河が溶け出すなどの海水面の上昇、AI時代の仕事の喪失、超高齢社会の到来による社会保障費の負担増など、現代の子どもの生きていく社会の不透明さが予想されています。また、国家観の違いなどで近隣諸国同士の侵略や葛藤も増えています。
幼稚園やこども園、保育園などの運営では、社会の変化、保護者の働き方、生活様式の変化や国や行政からの要請などもあって、世界にまれにみる長時間保育を提供する国となりました。保育担当者の就業時間は8時間が限度ですから、数人の担当者が12時間シフトをまわして保育は行われます。子どもの健康状態やその日発生した様々な出来事などもスタッフ間で伝達され、漏れのないように神経を使います。子どもの側も、担当者の変更や段々疲れてくることもあって情緒が不安定になり依存的になる子どもに手を焼いたりします。
保育時間が長くなるということは、朝の新鮮さとは違って子ども同士のぶつかり合いやケガも当然多くなります。原因は様々ですが、疲労と共にイライラが発生し、ちょっとふれただけなのに「○○ちゃんが叩いた~」などのいざこざも増えます。1歳児などは少し目を離したすきに、嚙みつきも発生し、保護者に報告・謝罪が必要です。丁寧に経緯をお話しすると「そんなに細かく見ているのなら、留められなかったんですか!!」と攻撃的に話されることもありうんざりします。
先日敬老の日にちなみ祖父母招待日があり、3歳児が保育室に入って遊んでいたところ、仲良し同士のいさかいが起こり、祖母Aさんの孫が目の前でトラブル発生、顔に傷がつきました。もちろん担任は子ども同士に話をしたのですが、後刻、祖母と母が連れ立って園においでになり、担任との緊急懇談になりました。傷をつけた子どもを担任が強く叱らなかったことが「おかしい」というのが主訴です。クラス活動の中で様々なぶつかり合いを経験するのが重要な幼児教育の目的の一つと心得ていますが、一人っ子の親と祖母に理解いただくことは難しい様子でした。幾度となく話しても理解されず、未だに火種は残っているようです。
当事者である子ども同士、実は仲良しで、毎日朝から一緒に遊んでいる同士ですから、その後は何もなかったように仲良しなのです。子どもが一つ一つのいさかいをどう感じていたのかも大切ですが、この経験は、親を離れて集団で保育を行うことで生じる必然的な出来事で、じゃれ合いも含めて相手の存在を感じ合う貴重な出来事です。
生まれながらにして人付き合いのうまい人はいません。多様な人と、それ相応の付き合いをして社会性を獲得して生きていくということは、それなりの学習が必要なのです。うまくいくときも、うまくいかないときもあって、間合いの取り方や塩梅も、口頭で伝えることは難しいのです。経験を積み重ねるしか方法はありません。
私の恩師が「人間、経験を超えることはできない」と話していたことを思い出します。毎日やってくる仲間間でおこる事象が、社会性を学ぶかけがえのないタイミングだと理解することが大切です。反対に前述のようなリアクションが保護者から還ってくるようでは様々なぶつかり合いを経験することは難しくなりますし、保育現場の担任は、葛藤が起きないよう制止できるよう見張ることになります。そのような園で育った子どもたちは、長じて人との接触や葛藤に憶病になってしまうことが想像され、将来に禍根を残します。
携帯電話などの普及で、相手がだれかわからない職場の固定電話に出るのが怖い若い社員がいる、という話を知り合いの経営者から聴きました。便利なデジタル機器に囲まれれば囲まれるほど孤立が高まり、対人関係が苦手な人が増えるとも言えます。
多様な人と共存する力を鍛えることができる期間は、学習の成績がつく前の生活とあそびを楽しむ乳幼児保育が最適だと思います。家庭で親と子だけの生活では得ることのできない経験が、集団保育の場面にあるのです。この貴重な教育を司っているのが我々乳幼児期の施設保育であり保育者たちなのです。