園の下の力持ち

2020.11.12
『タカクテキ』

自分が主体の日常生活を送っている中ではなかなか気づきにくいことがあります。ただ、何かのきっかけで普段とは違う物事の側面に気づくことがあるのではないかと思います。

例えば、スーパーで商品の陳列をしたりレジ打ちをしたりするパートをしているとします。できるだけ消費者に買ってもらいやすいように陳列を工夫し、お店の商品在庫をより循環させるためにも賞味期限が迫っている商品は棚の前の方に移動させ、更に棚が散らかっていれば整え、お客さんに気持ちよく買い物ができるように普段から心がけていくと思います。一方で、自分が仕事ではない時に消費者の立場でスーパーに行けば、例えば牛乳を買う時には少しでも鮮度の良いもの、賞味期限がより長いものを選ぼうと前の牛乳を押しのけ、棚の奥から賞味期限が数日長い牛乳を引っ張り出して買うことがあるかもしれません。これは同じ金額を支払うのであればより良いものを得たいと思う、人としてある種当たり前の心理だとは思います。ただ、同じスーパーという空間の中に“立場の違う人”が存在していることに気が付くことは実際なかなかできません。

園生活に置き換えてみると、コロナウィルスの感染予防を取るために行事への参加人数を制限した時に、「〇〇歳以下の子どもは参加人数のカウントには入れないでほしかった」というご意見が上がりました。しかしそれと同時に、「徹底した参加人数制限のおかげで密を防ぐことができて本当に良かった」というご意見も上がります。マスク着用のルールを設定すれば「子ども達のマスク着用はそれぞれの子どもに決めさせてほしい」というご意見の一方で、「不特定多数が生活する室内ではマスク着用は必須なので、園の生活でも徹底してほしい」というご意見も上がります。

それぞれの立場で考えると、お互いの主張それ自体に間違っていることは一つもないのですが、別の視点、つまり「多角的」に物事を見ていくと、同じ事柄に対して正反対の考え方が存在することが分かります。様々なことに関してどちらが正解かということは状況によっても変わるでしょうし、上記のような例の場合には“正解”ではなくて“最適解”を客観的な根拠に基づいて決定していく必要がありますが、自分の立場だけで考えるとなかなか腑に落ちにくいものだったりします。

子育てにおいて、「相手の気持ちを考えられる優しい子供に育ってほしい」と願う親は沢山存在すると思いますし、私も我が子にそのようになって欲しいと切に願いますが、親である我々がまずは主体的に生きる実生活の中で、定点的・画一的な価値観の中に生きず、「多角的」な視点で日々の状況を捉え、様々な人の想いを受け取ったり感じたりしながら柔らかな頭で生活することが出来たら、きっと自分たちの子ども達もそのように育つでしょうし、社会はもっと良くなる、そんな風に感じます。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会