園の下の力持ち

2020.11.27
『褒められて育つ』

「私は褒められて伸びるタイプだから」というようなことを耳にすることがあります。はっきり言ってそんなことはみんな同じで、褒められることでモチベ―ションは高まり、やる気スイッチが入り、気持ちにゆとりができることで細かなことが気にならず、目的に向かって邁進する力にすることができます。このことは、大人も子どもも実は同じです。

子育てにおいて、様々なシーンで子どもを褒めると、嬉しそうな表情をしながらまた次の同じような場面でもその嬉しさを再現したいかのように、子どもは同じ行動を取ったりすることがよくあります。誰かに認められることが嬉しくて、決して何か自分の利益となるために媚を売っているというものとは違う、そんな乳幼児期の姿が思い起こされる方もいるのではないでしょうか。

その一方で、どうしても親にとってはしてほしくない行動というものもあります。机の上に登ったり、ガスレンジのボタンを押そうとしたり、外出先で握った手を振り切って走り始めたり。その都度ダメなことをきちんとダメと伝え、社会通念上正しい判断とされるものに沿って子育てすることは躾の上ではとても大切ですし、褒め続ける子育てというのは実際あり得ないのですが、ついつい褒めることよりも叱ること、時に叱るという理性的行動を飛び越えて感情的に怒ってしまうということもあるでしょう。そしてそれは例えば両親ともに健在の場合には、育児により多くの時間を割く親に多い傾向かもしれません。家庭の中でどちらかの親が叱っていたら、もう一方の親は同じような態度を取らないと決めているようなご家庭もあると言います。

先日とある団体の子育て支援に関するシンポジウムに参加させていただいた際に、興味深いお話をされている方がいらっしゃいました。

「子育てに悩む保護者の方は、特に自分の子育ての正解を探そうとする傾向が強いために、うまくいかないことがあると余計に悩んでしまっている。実は、子どもを褒めることはあっても、自分の子育てを誰かに認めてもらったり、褒めてもらう機会がとても少ないことも、子育てに対する不安をより大きくする」

という趣旨のお話しでした。保護者の皆さんと同様に私自身も子育てをしている立場として、この内容にとても共感しました。例えば、活発でいつも明るく、幼児教育業界で長く働いていた友人でさえも、寝かしつけに時間が多くかかって涙したという話をしていたり、泣き声を聞くだけでストレスを感じでリビングに子どもを残してトイレに数分間籠ったという友人もいました。乳幼児教育のプロでさえ我が子の育児ではそうなのですから、育児というものがどれほど簡単なものではないかが分かると思います。

毎日子育てに追われ、自分の時間が殆ど持てず、日々の生活を何とかこなしてる間にも、それぞれの子育ての形が認められ、褒められる機会を生み出すことは、各家庭でのそれに加えて我々乳幼児施設から保護者の方への子育て支援の一つのカタチという観点では必要なことかもしれません。ただ、子育てには終わりがあります。どんなに手を出したくても、手を伸ばしたくても、決してそれが許されなくなる瞬間が来ます。だからこそ今この瞬間を楽しむ感覚も併せて持ち続けたいものです。子育てを通して、子どもだけではなく大人も育っている表裏の関係であることを感じられるその日まで。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会