園の下の力持ち

2021.08.30
『車いすラグビー』

東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたっては、コロナ禍での開催に賛否両論があるでしょう。ただ、その舞台を目指してただひた向きに、我々が想像もできない努力を重ねてきた選手たちにとって、この場所が1年遅れとは言え予定通りに準備されたことは喜ばしいことであったと思います。多くの選手の「開催していただけて良かった」というコメントの中に、選手として競技のためのトレーニングに集中すればいいだけではない、大きな困惑を通り抜けた先のオリンピック・パラリンピックであったことは間違いありません。

個人的には、これまで知ることのなかった競技が例えそれがテレビ越しだったとしても見ることができるのが、このオリンピックやパラリンピックの醍醐味であると思います。自分の人生の中で一度もその競技に出会うチャンスさえなかったような競技もあるので、見ながら競技のルールを調べるといったこともありますが、その道の一流選手たちの活躍は惚れ惚れします。今回私はタイトルにした「車いすラグビー」に特に感銘を受けました。1977年のカナダのウィニペグ市で生まれものだそうですが、今大会の日本チームの結果は3位銅メダルと、目標としていた金メダルには届かなかったようですが、それでも私はこの競技の奥深さと面白さの虜になりました。

【ルール】
▽コートの広さはバスケットボールと同じ。バレーボールを元に開発された専用のボールに松やにをつけて使う。ボールを持った状態で車いすの2つの車輪がトライラインを通過すると得点。得点は1点ずつ、前へのパスも可能。
▽1チーム12人まで登録でき、試合には4人が出場。交代の人数や回数は制限なし。
▽選手には障害の程度によって「0.5」から「3.5」まで7段階の持ち点があり、コート上の4人の持ち点が合計で8点を超えてはいけない。女子選手が入る場合は持ち点の上限が女子1人につき「0.5」プラスされる。
▽試合は8分×4ピリオド。同点の場合は3分間の延長戦を決着がつくまで繰り返す。
▽ボールを持っている選手は10秒以内にドリブルするかパスをしなければならない。攻撃側は12秒以内に相手コートにボールを運び、40秒以内にトライしなければならない。時間を超えると相手ボールになる。
▽トライライン前のキーエリアに同時に入れるのは、守備側は3人まで。攻撃側は10秒までしかとどまることができない。

私が最も感銘を受けたのは、障害の程度によって7段階に分けられる持ち点を基準に、競技に参画できる選手たちの多様性がルールの前提とされていることでした。車椅子生活を行う、比較的体が自在に動かせる選手を4人揃えて強いチームが作れる訳ではなく、障害の度合いをチーム合計として統一しなければならないことが前提となっていること。これはまさに多様な人が多様な形でチームに貢献するために考えられたルール設定です。当園の教育・保育の在り方の中で、多様な子どもたちが一つの生活を共にする事にも通じるものがあると感じました。多様な人が一つのことを共有することの当たり前が体現されているこのスポーツから多くのものを感じ、更なる多様性を受け入れることのできる深くて広い価値観の中で、この園に関わる子どもたちとの生活がより豊かになれば嬉しく思います。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会