学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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親ガチャ(おやガチャ)は、SNSの普及で他人の私生活の良い面が見えるようになったことで、羨望する他者との遺伝的要因(生まれ)と環境要因(育ち)の違いを「努力では挽回できない差」と“ガチャ”に例えた日本のインターネットスラング。(Wikipediaより)
このような言葉が親に対して向けられている現代。親として我が子とどのような日常を作り上げていくのかを切に考えていかなければならない気持ちに迫られます。
お茶の水女子大学の名誉教授である内田伸子さんが書かれた『学力格差は幼児期から始まるか? 』という論文には、実に考えさせられることが多くあります。(原本は下記リンク)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eds/100/0/100_108/_pdf/-char/ja
保護者向けの懇談会でお話ししたいと思いつつ今年度は時間が足らずにお話しできなかった内容も含まれますが、この論文の中で面白い部分をいくつか要約して紹介したいと思います。
①習い事をしているか否かで語彙力には差が見られた。習い事をしている子どもの方が語彙得点が高かった。ところが塾のタイプ、すなわち芸術・運動系か、進学塾や英会話塾など学習系かで差はなかった。
②体操教室やバレエ、ダンス教室に通っている子や、体操の時間を設けている幼稚園や保育所に通園している子どもの運動能力が実は低く、運動嫌いの子どもが増えてしまうことが明らかになった。
③小学校の教育を先取りして学習を導入している一斉保育の幼稚園や保育園に比べて、子どもの自発的な遊びを大事にしている自由保育の幼稚園や保育園の子どもの語彙得点は高い。
④語彙得点としつけスタイルにも高い相関があることが分かった。語彙得点が高い子どもは共有型しつけ(こどもとのふれあいを重視し、子どもと体験を享受・共有する)を受けており、語彙得点が低い子どもは強制的しつけ(大人中心のトップダウンのしつけや力のしつけで子どもを従わせる)を受けていることが分かった。
そしてこれらのことから(ほかにも沢山の要素は論文中にありますが)、子どもの学力格差の原因は経済格差ではなく大人の養育や保育の仕方が媒介要因であると結論づけられています。更に子どもの主体性を大事にする育て方や保育の仕方が子どもの自律的思考力や拡散的思考力(PISA型学力基盤力)や学習意欲を育てるカギともされています。
当園の保育方針はまさにこの論文の中で大切とされている「子どもを大人と対等な人格をもつ存在として尊重する雰囲気」を同じく大切に考え、そして「子どもたちの自発的な遊びを大切にしている」スタイルです。すぐに結果が見えない幼児教育の世界だからこそ、これらのエビデンスに沿った分析を参考に園の方向性をきちんと定めているのかどうかが大切だと感じます。