園の下の力持ち

2025.05.01
愛着が溢れだす

新年度が始まって一カ月。せっかくそれぞれの子どもたちが母子または父子分離をスムーズにできることが多くなっていた4月後半から、ゴールデンウィークという保育者の4月の積み上げを一瞬にして打ち砕いてしまいそうなお休みを経て、また振り出しに戻るような気持ちで子ども達との生活が再開しようとしています。とはいえ今日は5月1日。数日後から4連休がもう一度…いいのか悪いのか。ご家庭にとっては喜ばしい期間ではありますが、何とも複雑です。

4月前半の様子を振り返ると、母子・父子分離の際に壊れんばかりに泣き叫び、そんな姿に保護者の方も後ろ髪を引かれる様子で、時には目に光るものを貯めて園を離れる様子さえありました。すれ違う複雑そうな保護者の表情を見て、「いい愛着がこれまで築かれてきた証拠ですね」とお声がけしつつ、何年か後に振り返ると「あんなこともあったなぁ」という記憶で上書きされることが多いのですが、いざその時にはなかなかそんな見通しは持てないからこその複雑な心境です。

一方の子どもたちはというと、接着剤で保護者とくっついているかのような強い力でしがみついているところを、保育者にベリベリっと音がするが如く引き離され、ひとしきり大きな声と力で抵抗する様子を見せますが、親の姿が見えなくなると途端に様子が変わる子たちが沢山います。帰るころには朝の嫌だった気持ちがどこへやら。楽しい一日があっという間に終わってしまって、もっともっと遊びたい!なんていう様子でお迎え時間になっていることもしばしば。初めての「親離れ」「子離れ」によって、これまで親子だけで共有していた二人きりの時間から、それぞれが共有しない別々の時間を過ごすことになり、不安もあればその分育つ部分も垣間見えます。

園の中には沢山の面白さが散りばめられています。子どもたちは、保護者が見えなくなったその後に、そんな環境に目をやり、感じ取り、そして探索が始まります。歌人の穂村弘さんという方が『短歌の友人(河出書房新書)』の中で

面白さとは「共感」か「驚き」である 

という言葉を残されていますが、まさに、子ども達が遊びに対して感じていることを言い表した言葉であると思います。自分自身がその遊びの楽しさを知っていて、それに再び向き合う「そう!これが僕・私の楽しいこと!」という自らの経験や記憶に対する【共感】と、「なんだこれ!まだやったことなかったけど、想像の上を行く楽しさ!」という思いに対する【驚き】。そんな二つの概念を、毎日行ったり来たりしながら過ごすことで、子どもたちは遊びを通した深い学びを得ていくわけです。だからこそ、幼児教育は環境の教育と言われるように、私たちも充実した環境で子どもたちを迎え入れる努力を続けなければなりません。

日々変わりゆく子どもたちの遊びの様子を眺めながら、微笑ましい日常が過ぎていきます。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会