園の下の力持ち

2025.09.01
大学入試が本当に変わってきた

毎年入園説明会の冒頭に、これから大きな変化があるであろう教育や時代の流れについてお話をさせていただいています。その中の一つに、大学入試の変化というものがあります。

35年前の1990年度と今年度2024年度の大学入試を比べてみると、日本の教育制度の変化や社会的背景が色濃く表れていることが分かります。1990年度当時、大学入試の中心は「共通一次試験」(後の大学入試センター試験)と各大学の個別学力試験(一般入試)でした。受験生は知識暗記やマーク式の選択問題を中心とした筆記試験に臨み、合否はほぼ学力試験の得点で一括して判定されていました。どちらかといえば私が得意だった面接や小論文は一部の大学や学部に限られており、多様な評価は重視されていませんでした。受験のための勉強という側面ではあまり高校時代に勉強を行っていなかったため、“大学に入るための勉強“に私も随分とてこずりました。

一方、現在の大学入試は大きく様変わりしています。2021年度から導入された「大学入学共通テスト」では、思考力・判断力・表現力を測る出題が強化され、従来の知識再現型から応用型へシフトしました。さらに、一般入試に加えて「総合型選抜(旧AO入試)」や「学校推薦型選抜」が拡大し、調査書や活動実績、面接・小論文など多面的な評価が重視されるようになりました。

この背景には、社会や時代が求める人材像の変化や、知識偏重からの脱却を目指す教育改革がありました。

さらに、情報通信技術の発展により、出願や合否発表の電子化が進み、1990年度には想像もできなかった外部の英語テスト(TOEFL iBT・IELTS・英検など)を使った英語外部試験利用といった仕組みも広がっています。乳幼児施設同様、少子化の影響も大きく、大学全入時代に突入した今日では、入試は「狭き門」から「多様な入口」へと変化しました。しかし、その多様な入口は裏を返すと、これまでの知識詰め込みをベースとした学力試験の得点だけでは“多様”と受け取られない潮流とも言い換えることができます。

まとめると、1990年度の大学入試が「学力一点突破の選抜」であったのに対し、近年の入試は「多面的・総合的評価による多様な選抜」へと進化していると言えます。これは単なる試験方式の違いではなく、先ほども書いたように教育観や社会構造の変化を映し出すものだと言えるでしょう。

ちなみに2024年度の入試を具体的に覗いてみると、
<公立大学>
一般入試:約 73%
その他(推薦型・総合型など):約 27%

<私立大学>
一般入試:約 44%
その他(推薦型・総合型など):約 56%

つまり、国公立大学は依然として一般入試の比率が高く、学力試験中心の傾向が残っていますが、私立大学は推薦や総合型(旧AO)入試が半数を超え、多様な評価方法を重視する方向にシフトしているのが顕著です。これが数字で表すリアルです。

今回のテーマである受験ということだけではなく、何に対してもそうですが、いつか変わると分かっていて、実際に少しずつ変わり始めていることに対しても、人は不思議と「まだ大丈夫だろう」という気持ちで行動を変えないことが多くあります。地球温暖化などまさにそのような例ではないでしょうか。

今子育て真っ最中の親にとって、この流れはしっかりと捉えていく必要がありますし、そうしなければ子どもにとっての“最善で最適な場”を提供できない可能性もあります。子どもが活躍することは、自分自身が活躍できることと同じか、それ以上に嬉しい事だと感じる親は沢山いるでしょう。これからの時代の多面的・総合的評価による多様な選抜を我が子が潜り抜けられるためには、単なる机上の知識ではなく、原体験に基づく知識や、膨大な情報の中から利用最適であると判断する精度やスピードがこれまで以上に価値を持ち、必要とされるなのではないかと思います。

親が思っている以上に、入試の在り方は本当に変わってきています。
『きっとこうしていればこの子には間違いない』の価値観、しっかりUpdateしなければいけませんね。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会