周一ぶつぶつ

2011.01.17
「子育てとは、自分の子ども時代を生き直すことである」という事実

大人の生きにくさに比例するように子どもへの虐待事案が増加しているように感じるのは私だけではないと思います。事実、厚生労働省の調査では、2009年に全国の児童相談所が対応した児童虐待件数は4万4210件で、1990年から増え続け、1990年比約40倍に達するのだそうです。老人の孤独死や、行方不明などと原因の根っこは同じだと思いますが、近隣の助け合いや、良い意味でのお節介が極端に減ったことと親の生きにくさを現す事象だと思われます。

■子どもは近代に発見された
子どもという存在を発見し、社会に問うたのは、ジャン・ジャック・ルソーという哲学者だそうです。著者「エミール」で子どもという存在を明らかにし、大人とは違った感性や生き方をする動物であることを社会に問いました。それまでのヨーロッパでは、子ども達はできの悪い大人と考えられ、労働者階級の子ども達は学校に通うこともできず、ムチでたたかれながら、長時間の労働に従事させられていました。日本では比較的子どもは緩やかに育ったと言われていますが、それでも飢饉になったりすると、口減らしを理由に殺されたり、裕福な家庭に奉公に出されたりする、人身売買の対象でした。そのような意味で言うと、日本では江戸時代位にやっと「子ども」という存在が認知されたと言っていいでしょう。しかし、現代でも、時代の影響をまともに受けるのが、弱者である子どもや老人です。
■少し前までは日本は貧しかった、でも子どもは豊かに育った
子どもの出生数は戦後毎年のように減少し、昭和20年初期に240万人生まれていた子どもの数は、100万人になりました。2035年には75万にしか生まれないと推計さています。各家庭の子どもの数も減り続け、多い家庭も存在しますが、大方1人か2人、中には、結婚しても選んで子どもを作らない家庭も出現しています。子どもの数が多いときは、親の忙しさもあって、ほったらかしの状態が横行しました。その中で、長姉を中心に子守を担い、日中年上の子ども達と一緒の生活で、それはそれで結構楽しかったのですが、生活は苦しく、欲しい物も買ってもらえないことを我慢せざるを得ませんでした。洋服もサラを買ってもらうことは少なく、ほとんどの子どもは継ぎの当たったお古でした。でもなぜだか幸せ感にあふれていました。
子どもの数が減ったのだから大切に育てられるはずが、必ずしもそうではないということが起こっています。遊ぶ場所も少なく、本人が望むと望まざるとに関わらず早期教育のレールに乗せられ、子どもの将来の幸福のためなのか、親の欲目なのかはわかりませんが四苦八苦している状況が目立っています。
■子どものセンスオブワンダー(自然を受け止める感性)を育むには
子どもは本来ざわざわしたもの、動き回るもの、周りを見ずに突然飛びだすものなのですが、その一般的合意も、少々危なっかしくなっているようです。幼稚園や保育園の子ども達の声は、近所迷惑の対象となりました。近所の老人や大人だけの住まいの方々は、ご自分も子どもをずいぶん前に育てたと思われますが、なかなか理解を得ることが難しく、折り合うのにとても骨が折れることが度々です。子ども達は、そのわいわいがやがやの中で、そして無鉄砲と見られるような行動力によって、自らのセンスオブワンダー(自然を受け止める感性)を鍛えていきます。そのような幼少期を送ったどもだけに与えられる感性は、大人になって、社会の中で仕事をするときに発揮される感性と同義です。自然界を大切にする心もそうですが、自分の自然な感情に耳を傾けたり、友人の悲しさに寄り添うのもこのセンスです。周りの人と、心地よい丁度の関係も、このセンスです。たくさんの失敗を繰り返し、悲しい思いを感じたときに、そばの大人に受容され同調され、力を蓄えて再出発する経験がとても貴重です。
■子どもは天からの授かりもの
子どもを産むか生まないか、いつ生むかなどを、親が恣意的に決めることができる時代になっています。一面あらかじめ予定が立って幸せな時代であるとも考えられますが、残念ながら、「子どもは天からの授かりもの」であることと感じることは難しくなりました。従って、子どもは「つくるもの」と考えるようになり、子どもは「そだつもの」ではなく「大人がそだてるもの」と考えられ、早期教育など商業主義のターゲットとなってしまいました。
「育てられた者が育てる者に育ちあがる」という生命の法則は不滅です。いかに育てるかが、いかに生きるのかや、いかに家庭を持ち次の世代を育てるのかに直線的につながっています。子育て時期はいつ終わるのかと不安に思ったり少々つらいこともありますが、私たちと一緒に育て合いましょう。「あけぼの」はそう言う施設でありたいと願います。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会