周一ぶつぶつ

2011.08.04
子どもは昔からネチョネチョが大好き

園の機関誌である「わかば」は、スタッフが持ち回りで編集ティームを組んで作成しています。編集会議を開き、どんなテーマで、どのような紙面作りをするか、どうあれば保護者や関係の皆様に喜んで読んでもらえるか、充実するかなど、頭をつきあわせて検討しています。私への原稿依頼も、そのような観点で求められます。今回は「時代の変化で変わらない大切な物」というお題です。

子ども達と永年過ごしていて、「変わらない物」と聴かれて思いついたのは、今も昔も子どもは「ネチョネチョ、ドロドロが大好き」ということです。なぜなのでしょう。いくつか思い当たることがありますので書いてみます。
園で砂場に井戸ポンプで水を注ぎ込み、溝を掘り川を作り、池のような状態になることもしばしばです。ひとしきり遊んだ後は、水はそのままで、道具だけが片づけられます。数時間経ってその場に戻ってみると、水が引いた後に膜が張ったような表面が少し光っている不思議な膜があります。細かい粒子がかたまる前の薄皮のようなやつです。子どもは丁寧にその膜をはぎ取り、適当に集まると、それをネチョネチョと称して大事に器にため込みます。数時間そのままにしておくと固くなり、その固まりを砕くと、サラ砂に変化する、ということを発見します。
年少の時にはそのような観察は出来ないのですが、年中→年長と年齢がすすむに連れてそのような物質の変化を楽しむことが出来るようになってきます。粒子大きい砂は下に沈み、上部にあった細かい砂が水分の乾燥によって表面で固まる、物質の時間変化の原理なのですが、子ども達にとってはとても不思議のようです。年少の時はそこまでの観察は出来ないようであまりそのこと関心が無く、年長になるに従って気がつくようになる。当たり前のようなのですが、そのような年齢による物質への気づきや物への関わり方と、人との関わり方の上手下手が正比例していることに気付きました。
3歳年少児に抱かれるウサギはみじめです。一生懸命抱こうとしているのは分かるのですが、どう見ても首を羽交い締めにしているとしか思えない抱き方です。子どもの顔はにこにこ、ウサギはバタバタ暴れるという光景です。それが、年長になると、上手におしりを抱えて、ウサギも安心顔なのです。アリの行列を思わず踏みつけにする3歳児。これも関わりの試行です。
子ども達がベチョベチョやグニョグニョが好きなことは前述しましたが、これはほとんど現代の家庭内や地域から除去されています。テーブルにこぼしたミルクをベチョベチョが楽しめるようにそのままおいておける家庭は少なく、ほとんど即座に拭きとられてしまいます。グニョグニョニュルニュルの擬音に代表されるような物も、家庭ではほとんどお目にかかれません。「つるつるしている」「ベチョベチョしている」というような両極をしっかり体験することによって、だんだん中間あたりにある丁度を学んでいると言えます。 年長になったときには人によって関わり方を変え、あの子にはこの程度、この子はこの程度と、関わり方を変化させることが出来るように育つために、子ども自ら様々な感触の物との関わりに挑戦しているのだと思います。たくさんの物との格闘が、将来人との関係性の上達に寄与するなどとは、想像がつかないことですが、以上のことからも、乳幼児期に好奇心を発揮して遊ぶ環境がいかに大切か、がおわかりいただけると思います。
そのことがそうだとすると、ベチョベチョ、ニュルニュル遊びをしている子どもを、好感的にそっと見守る必要があるわけですね。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会