周一ぶつぶつ

2016.04.07
保育園落ちた!日本死ね!!!

 

『保育園落ちた! 日本死ね!!!』。

一人の保護者からの叫びが日本を駆け巡り、連日マスコミが大きく取り上げ、自治体や国会をも揺り動かしています。参議院選挙を目前に政府は自治体に対して保育園の規制緩和、増設の緊急指示を出し、自治体も対応に大わらわです。そもそも保育所は自治体に設置義務があり、保護者から要請があれば児童福祉法にのっとり入所の義務が課されていて、入れなかった保護者から訴訟を起こされれば自治体は負けます。今年度4月からわが豊中市でも多くの小規模保育所や株式会社立の保育所が創設されます。しかしその環境は園庭もろくにない様な状況で、長時間預けられる園児にとって必ずしも良い保育環境とはいえません。それにも増してしんどいことは、そのような環境で働く保育士にとってもストレスは多いことです。日々そのような環境で働いているうちに徐々にイライラ感が蓄積し、子どもに強く当たったりすることも大いに考えられます。加えて小規模保育所からの3歳児の引き上げは保障されていないため、3歳児入所の壁となります。無理やり低年齢保育所を増やすということはそのようなリスクを抱え込んでいることを知る必要があります。首相は低年齢50万人の受け入れ増を提案していますが、保育士はさらに10万人以上必要になります。

■幼稚園と保育所

大まかに言うと小学校入学前の保育教育施設は従前から幼稚園と保育所です。保育所は貧困や一人親家庭など、家庭保育に欠ける子どもを入所させてきました。ある意味「現実・現場の福祉的救済政策」と言えます。一方幼稚園は学校教育に位置づけられ、行くか行かないかは選択できる施設なのですが、良い幼稚園を選んで入れられるということは子どもの可能性を広げる意味でも保護者にとっては希望であり、未来の夢に賭けることとも言えます。

その二つの制度を統合しようとする試みです。子どもにとって乳幼児期は一度しかありません。統合の混乱の中とりあえず保育所にはもぐりこんだけれど、どうなるか試されるのであればあまりにもリスクが大きいのです。どの施設に通っても愛され幸せ感にあふれ、しっかり受容され、伸びやかに生活でき、賢さを身に付けなければなりません。しかし入る施設によってあまりにも様々で、○○式の保育を押し付ける園もありますし、ほうったらかしの園もあります。行政側も現在の制度の不整合からくる戸惑いや、混乱などで現場はばたばたです。待機児ばかりがクローズアップされその解消策が訴えられますが、望ましい保育の追及や保育の質を高めることが後回しにされています。子どもの最善の利益を追求する児童福祉以上に働く親を支える労働福祉に偏っているのは残念です。この乳幼児期を幸せに育った子どもは、必ずや将来社会に貢献することでしょう。将来の良い社会を形成するためにも、ここが踏ん張りどころです。

■そもそも保育所が不足し待機が大量発生しているのはなぜなのか

そもそも出生数が大幅に増えたわけではないのに、突然保育所が足らないのは何故なのでしょう?

  1. 子ども・子育て支援新制度が始まって、幼稚園でもない、保育所でもない認定こども園なる施設ができたので入れそうだと勘違いした
  2. 以前から働きたかった母親たちがこれを機会に保育所に申し込んだ
  3. 期待された幼稚園のこども園化が進まず、2号3号こどもの受け皿はそれほど広がらなかった
  4. これが一番深刻なのですが、家庭で3歳未満の乳児を母だけで育児することは土台無理で、何とか少しの時間でも他の人に育児を依頼したい願望が噴出した

緊急的に受け入れ数を増やさなければならないことは一定理解できます。事実、私たちの法人でも、昨年度と今年度で合計50人以上の3歳未満児を以前より多く受け入れる器を用意しました。が、焼け石に水で豊中市も1000人近い待機が発生しているようです。

■何故保育士が不足するのか

同時に、保育士不足も深刻です。近年大学では保育士養成課程が増えたこともあり保育士資格を保持して社会に出てくる新卒は格段に増えました。にもかかわらず圧倒的に保育士不足です。各保育所は実習に来る学生を囲い込み、早くから内定を出します。また実習後高額なアルバイト代を提示し、引止めを謀る園もあります。地方の大学に青田刈りに行く法人も横行し、いまや何でもあり状態です。そのような法人ほど毎年の退職者が多いのも気になります。

国を挙げて保育士の待遇を改善することは大賛成です。しかし一方で幼稚園教諭の待遇改善は光が当たりません。待遇の悪さは幼稚園教諭も同様です。北欧の国などでは小学校教員と同等の待遇が補償されています。しかしこの問題は給与改善だけで解決できるとは思えません。新制度に移行し若干人的余裕が与えられましたが保育士の働き方は以前と大きく変化はありません。8時間園児に向き合うという仕事の内容、子どもが昼寝の時間もSIDS(乳幼児突然死症候群)などのケアーで息を抜くことはできません。シフト制もあり勤務時間中に研修やミーティングなどの時間を確保することも容易ではないこと。やりがいを感じることが難しく、託児が中心となり教育的理想などが感じられないことに加え、長時間保育所で生活する子どもたちが幸せに見えないことも大きな問題です。また保護者の労働環境もかなり厳しい方がおられます。自分が結婚したら子どもが小さいときは自分で育てようと決意を固める人も目立ちます。新任保育士がたくさん誕生してもいつも保育士が不足する大きな理由です。

年度が改まり新入園児を迎えました。保護者と保育者が織り成す信頼関係の真ん中に子どもを位置づけ、安全を大切にしながらおおらかに子どもを育て合いたいと思います。理解し合うには時間と努力が必要です。大人みんなで努力しましょう。ようこそ「あけぼの子育て村」へ!!

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会