周一ぶつぶつ

2017.03.23
米百俵の精神

『米百俵の精神』

理事長 安 家 周 一

明治元年、長州藩を中心とする新政府軍と旧幕府軍の戦いで長岡藩は壊滅的な被害を受けました。人々は食物がなく飢えに苦しんでいるとき、窮状を察した三根山藩から米百俵が贈られました。文武総督であった小林虎三郎氏は「国が興るのも、街が栄えるのも、ことごとく人にある。食えないからこそ、学校を建て、人物を養成するのだ」と主張し、その財源で学校を造ったという逸話です。それほどに教育が何よりも重要であると人々に知らしめました。

現代においても、「教育は大変重要である」このことに異論を唱える方はいないのではないかと思うくらい当然の事とされています。日本は小学校から高等学校までの教育は、国の定める「学習指導要領」で規定され、教える内容が細かく決まっています。日本国中どこの学校に通っても、日本人として基盤になる学力を到達目標に設定して子どもは学習します。日本の特徴は、目標に到達していなくても進級や卒業ができることでしょうか。

小学校入学前の子どもが通う学校は従来幼稚園だけでした。保育所は児童福祉施設に位置づけられ教育機関とは一線を画していました。平成元年に法的拘束のある「幼稚園教育要領」が改訂され、引き続いて保育所の保育を規定している「保育所保育指針」が改定された際、3~5歳児までの教育内容を、幼稚園と同じようにすることが決められました。

このたび、国では学習指導要領・幼稚園教育要領の改訂など、教育の考え方を見直し、価値観の転換を図っています。知識や覚えた量を点数化するのではなく、「主体的で対話的で深い学び」の実現に重点を移しています。小学校入学前施設にも「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の視点」が新たに明示されました。小学校以降の教育を支える乳幼児期の教育は「非認知的能力」を中心に学びます。以下に添付の10の視点です。

ご覧のように、この力は社会に出たときに必要とされる力とほぼ同じです。乳幼児期に生活と遊びの中でこの力を身につけ、どっしりとした基盤のうえに様々な知識や、問題解決能力が積みあがっていくのです。

このように、人生にとって最も重要な時期の教育であるにもかかわらず、財政の投資は先進諸外国に比して極端に低いのが日本の現状です。特に、保護者の負担が多いのも特徴的です。国の財政が危機的な状況であることは様々な報道で知らされますが、ここが踏ん張り所。「米百俵の精神」を発揮して、基礎を培う教育や保育にしっかり財政投資をすることが何よりも重要だと考えます。このことによって、民主的で社会の責任を果たそうとする人が育ち、平和な国の繁栄があるのだと思うのです。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会