周一ぶつぶつ

2019.07.11
卒園生J.K君とアトピー性皮膚炎

4人のきょうだいが当園に入園したK家。きょうだい全員ともひどいアトピーで、いつもカイカイ状態で皮膚は乾燥して痒(かゆ)そうでした。食制限もあって、食事もままなりません。4人目が最後の年長児のときに、K母さんは当時の母の会(現在の保護者の会)の会長に立候補され、実行委員の仲間や、運営委員の方々に支えられながら楽しい母の会の運営をなさいました。その1年が終わろうとする頃、Kさんは乳がんを発症されました。周りの友人は良い医者や病院を紹介して治療を促しましたが、ご本人は病院に行こうとなさいませんでした。親しい友人たちもとても心配して私のところにおいでになりました。なんとかKさんを説得して欲しいとのお願いでした。ご主人と一緒に園長室においでになったK夫婦は、話されました。『がんになったことは悲しいけれど、がん細胞も私の細胞の一部です。この細胞と共存します』ときっぱり話されました。どのくらい痛いのかとか、どのくらい苦しいのかもぜんぜん判らないままでしたが、3月卒園と同時に家族みんなで大分県に引っ越していかれました。その後訃報に接することになります。それ以降25年くらいたつでしょうか。当時親しかった方から、Kさんの息子たちの様子を聞かせて頂きました。長男は大分県臼杵市野津町で無農薬野菜を作る百姓(本人が自分の職業をそのよう呼びます)を営んでいて、その方もJ君から無農薬野菜を定期的に購入していることなどをお聞きしました。

 

■日本の食材は安全だ

私は昨年の7月まで“日本の食材は安全だ”、と、信じていました。園の食材も国産を選択し、輸入物はできるだけ避けて仕入れを行ってきました。しかし昨年7月に開催された「NPO法人日本に健全な森をつくり直す委員会 養老孟司委員長」主催のシンポジウムに登壇させてもらった折に、私の認識はくつがえり覆ります(くつがえ)。

・日本で一般に流通している野菜に使われている農薬の単位面積当たりの使用量はOECD諸国で韓国の次に量が多いのこと

・広汎性発達しょうがい、自閉症の出現率がOECD諸国の中で韓国に続いて多いこと

と知り、自らの無知・不見識に恥じ入りました。帰阪し急いで有機の食材探しに走り回りました。なんとか昨年10月頃からあけぼのの各施設でも農薬や除草剤、化学肥料などをできるだけ使用しない食材を仕入れることが可能になリ、現在に至ります。

又、米の除草剤使用や農薬の使用も多いことを知り、一色米穀店から岩手県産の特別栽培米(除草剤1回のみの選定米)を仕入れ、7分づきで仕入れています。野菜は有機肥料会社「大和肥料」安保さんが付き合っている有機農家や能勢の生産農家をまとめておられる「山里農園」近藤さんとの出会いで仕入れ始められています。メニューもこれまでは各施設の栄養士が立てていたものから、それぞれの季節野菜を中心に、当法人栄養士が2ヶ月前に統一したメニューを立案して共有しています。おかげで、施設ごとのメニューの工夫や味付けが共有され、豊かな昼食の提供がなされるようになりました。

しかし野菜は自然のもので生ものです。ある時ゴボウを注文していたのに、モグラに全部食べられて供給できない、なんていうアクシデントも起こります。

 

■大分県臼杵市へ

仕入先を複数確保しないと系列園職員子ども合わせて約800人分の昼食をまかなうことはできないと考え、大分県臼杵市在住の卒園生、前述のJK君に相談しようと考え、振り替え休日の6月3日、大分を訪ねました。

3男と迎えに出てくれたJ君。日に焼け3人の男の子の父になり自信に満ち溢れた姿にまぶしさを感じるくらいでした。当時アトピーでがさがさだった肌はつるつるになり、健康そう。早速自慢の畑を案内してもらいました。完全無農薬・有機肥料で奥さんと二人で畑2町歩(約6000坪)、水田1町歩の耕作をしているとのこと。その時畝に生えていたニラを「周一先生、甘いですよ。ちぎって生でどうぞ」と勧めてくれ、いただきました。ジューシーで甘いこと。

卒園してから母を見送ったこと、大分で赤峰勝人さんの作物を食べることで自らのアトピーから開放されたこと、その後赤峰さんの農業セミナーで奥さんに出会ったことなどたくさん話を聞かせてくれました。

アトピー性皮膚炎は身体に入った農薬や有害物質が排出されるために吹き出てくるのであって、有機のものを皮ごと全部食べていればそのような現象は起こらないことと赤嶺さんは話されます。(「アトピーは自然からのメッセージ」「ニンジンから宇宙へ」赤峰勝人著 株)なずなワールド)

 

■ネオニコチノイド

有機食材を食べることで何が変わるのか?という質問や、調味料、肉、卵など全部を有機にすることなんて不可能だ、と言われる方もおられます。先日朝日新聞の記事で食物に残留する水溶性農薬ネオニコチノイドの残留調査結果が掲載されました。有機食材を選ぶ家庭と一般の食品を選ぶ家庭の人の尿を比較検査したところ、当たり前の話ですが圧倒的に普通食材の人の尿から検出される残留農薬が多いとの検査結果でした。(園の掲示板に張り出し中)

アトピーなど現在発症している状態を軽減させるという農薬の影響もさることながら、長い間一般の食材を食べてきた女性が妊娠した時、その影響で胎児の脳に器質的障害を起こす可能性が否定できないこともあり、小さい頃から習慣として安全な食材を選ぶことを定着させることが次代を生きる人たちにとっても重要だと考えるのです。(「発達障害の原因と発症のメカニズム」黒田洋一郎・黒田純子著 河出書房新社)

安全な食材への挑戦をはじめて8ヶ月。まだまだ無知で至らないこともあります。肉やハム、ウインナーソーセージ、卵や調味料、乾物など、至っていない食材もまだあります。コストのことも気にはなりますが、まずは安全なものを手に入れることに集中したいと思います。山里農園近藤さんが毎週木曜日、当園駐輪場スペースで無農薬野菜マルシェを開いてくださり、たくさんの保護者が野菜の購入をしています。近藤さんの軽妙な『おいしいですよ、こう調理すると抜群です』などの語り口を聴きながら会話が弾みます。

幸せ感にあふれるひと時です。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会