学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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◆子どもたちはより困難な時代を生き続けなければならない
現代の日本が抱える社会的重大事を挙げると、いくつかの課題が頭に浮かびます。何よりも深刻なのは迫りくる温暖化です。つい最近の話題であれば、2019年の出生数が90万人を下回る、超少子時代があります。子どもを生む世代の人数が圧倒的に減っていくこれからを考えると、30年以上国を挙げて少子化対策に取り組んできたのに奏功しなかったということです。また、森友・加計学園の疑惑、原発事故の後(あと)処理や人体への影響、関電のわいろ、桜を見る会の目に余る非常識の数々、政治や官僚機構への不信も募ります。日本という国は、責任の所在や正義への観点が他国と違っているように感じざるを得ません。うやむやのまま見過ごすことができません。
また、8050問題もあります。80歳代の親と50歳代の引きこもりの子どもが、親の年金をあてにした同居生活を余儀なくされることの問題です。また、高齢化による介護問題や医療費の増大、年金や生活保護者の問題など社会保障の問題も悩ましい限りです。
このように、これから生きていこうとする人たちは、大きな困難を前にして逃げ出すわけにはいかない世代です。一生を能動的に生き、地球や人々との共存を大切に生活し、平和を希求し、自立・自律的に生きる力がことさら必要です。
◆幼少時代をどのように養育され護られ、どのような力をつけるのか
脳科学や遺伝子学の研究によって、幼少時代の重要性が明らかになっています。出生後3年くらいまでに、あるがままにゆったりと保護され、飲みたいときには飲み、眠りたいときには眠ることができる安心の環境において、脳細胞が増加することがわかってきました。3歳くらいから自分には必要ないと判断される細胞は刈り取られ、70%くらいの量が生涯残るのだそうです。そんな時期にテレビやスマホの子守では受け身なデジタル情報で脳は満たされます。また、虐待を受ければ脳は縮み細胞の増加は望めません。この時期は母・父と私とあなたという1対1の関係、すなわち基本的信頼関係に基づいた2項関係がとても重要です。生後9か月ころからは二項関係を基盤に、第3者への関心を広げ、探索活動が活発化します。父母を中心とした安心した人との結びつきの中で興味の幅を広げ、様々な人・物・事に関わります。これが様々な学びの基盤である三項関係です。とても知恵がつき様々ないたずらに見える行動など、試行錯誤が繰り広げられます。満3歳ころからは、他児に興味が出てきて、遊びをまねたり、おもちゃを奪い合ったりします。この時期は少々の失敗は気にせず、何度でもチャレンジする姿が見られる時期でもあります。生涯積極的に生きていくために必要な積極性が身に付きます。この後小学校に進学し、基礎的な学習時期となります。
◆自尊感情の源はアタッチメント=愛着・基本的信頼感である
出生後~小学校くらいまでの大きな課題を整理してみると、
要は、「安全で安心、自分らしく振舞える居場所と時間が確保されること」です。一般的には家庭です。そのような視点から考えると、生活環境ががらりと変化する場所に小さいときから預けられるのは一般的には好ましいことではないとも言えます。
◆長時間労働とあるがままを許容される家庭での生活
加えて8時間を超える長時間保育や労働は子どもにとっても養育者にとっても厳しいと言わざるを得ません。おのずと家庭での生活時間が短くなり、大人側の忙しさが募り、余裕がなくなります。親の顔色をうかがうことなく甘え自己発揮することを阻害される原因になり得ます。保護者の働き方、働かせ方が先進諸国の中では際立って長時間なのが日本です。自分だけではどうしようもないのかもしれませんが、放置しておくわけにはいかない問題であります。お父さんも半年ほど育休を取っておぶい紐で子どもと日中ぶらぶらできるような働き方。女も男も子どもとゆったり関わることのできる環境が用意されることが、実は少子化対策にも一番有効なのだと思います。
少子対策は現代の親の働き方を根本から見直すことが一番の早道であり、どの人も将来をその人らしく、生き生きと豊かに生きる力を獲得する源泉ではないかと思うのです。そのためにも、渦中(かちゅう)にある保護者が、しっかりとした愛着関係が結べる望ましい子育て環境を実現するために、小さな一歩を踏み出す必要があります。共に努力したいと思います。