周一ぶつぶつ

2021.07.16
「通園バスを廃止します」と宣言してから3年たちました

3年半前の次年度入園説明会に「3年後をもってバス通園を廃止します」とお話ししました。会場はざわざわしたことを記憶しています。今春からはバスは運行せず、すべての保護者が自分の子どもと同伴で登降園をされています。

昭和54年から昨年度まで通園バスを運行してきました。もともと豊中市私立幼稚園連合会はバスを持たないことを紳士協定として順守してきましたが、当時歩いて通える幼稚園がない地域が市内に2か所存在し、その地区に限定して6園が3園ずつ共同で1台のバスを所有し、共同通園バスを運行することになりました。地域を北と南に分け、それぞれのバスには3つの園の名前が記載され、バスには毎日3園の園児が乗車をするという画期的な試みでした。月日がたち、各園の乗車人数の増加もあって数年で別々な運行に移行されました。

なぜ運行を廃止する決断をしたのかですが、いくつかの要因がありました。

  • 現在では豊中の幼稚園でも幼稚園バスが入り乱れるように走り、各園工夫を凝らしたペイントのバスが走り回っているが、SDGsの観点からどうなのか。
  • 私たちは子どもが育つことを願う子どもや保護者のための教育機関だが、園までの距離が数百メートルの短い距離でもバスに乗せることで、園児の足腰はますます虚弱になる。
  • 子どもが親と手をつないで歩くことを喜ぶ時期はそんなに長くは続かない。小学校に登校するようになれば一人で安全に登下校しなければならないわけで、毎日の登降園こそが子どもに安全教育を施すのにとても大切な経験であること。
  • 何よりも、親と様々な会話を楽しみながら歩くことは、子どもの原体験として貴重で心に残ること。
  • コロナ禍においてはバスの中は過密で、お喋りは許されない。ただ黙って荷物のように運ばれるだけの車両に乗せることになる。
  • 人件費、燃料代、維持費、バス購入費などに対してバスの協力金は徴収するがその金額で賄うことは難しく、バスを使用していない園児との公正が担保できない。
  • なによりも、バスに乗って行きかえりすることによって、季節の風を感じたり草花や木々、鳥や昆虫を発見する、空や雲を感じるなどの感性(The Sense of Wonder) が磨かれるであろう可能性を子どもから奪うことになること。

このように書き出してみると、廃止するタイミングをもっと早くできなかったのかと反省しきりです。

今年度になり、これまで通園バスを利用なさっておられた保護者に現状の本音をお聞きすると、皆さん子どもと歩いてくる楽しさや、自転車で風を感じて走る爽快感を話され、何よりも毎日担任や園の保育者と顔を合わせ子どものことを話しができる喜びを話されました。

時代は変化します。温暖化によって地球が悲鳴を上げていることは誰しも実感しています。私たちにできることはどんな些細な事であったとしても保護者にそのわけを話し理解を求めて挑戦するに値すると考えています。それが子どもの未来を願う教育の本懐であると思います。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会