周一ぶつぶつ

2022.07.08
同調意識蔓延の中での自律性

 

■こどもの城

少し前の話になりますが、東京青山にあった「子どもの城(1985年創立)」が老朽化?のため取り壊されるということと、その跡地に児童相談所・防災拠点の建設計画が公表されました。東京の一等地の目立つところに児童相談所ができることは、しんどい親や家庭、子どもを救済するシンボルになることもあっていいことだな、とうれしく思っていました。ところがそんなものを建てたら地価が下落する、と近隣住民が騒ぎ始めたということが後日報道されました。

新聞や報道で、子どもの虐待案件が頻繁に報道され、そのたびに心が締め付けられる思いをしているのは私だけではないと思います。多くの人がその惨状に心を痛め、子どもの恐怖心を思うと、もっと早く救出できなかったのかと憤ります。青山の一等地に住んでいる人たちも大方同じような心持になられるはず、と推察しています。しかし、自分の家の近所に、児童相談所が来るのは、それとこれは話が違うのでしょうか。

幼稚園やこども園、保育所などを新設する時にも同じような経験をいやというほど経験してきました。「子どもは宝」と言いながら、こんな静かな住宅地に園を建てるなんて!と詰め寄られます。「住宅地だから施設が必要です」、「静かな環境だから子ども達の環境としては最適な環境です」、と何度もお話ししても平行線でした。「皆様方にもお孫さんがおられるでしょう?」とお尋ねしても、「園のおかげで地価が下がる!」、(≒根拠はありません)、「自分の孫はもう中学生だから関係ない!」などと支離滅裂なことを主張される始末。地域の迷惑施設視されることもある乳幼児期の施設です。つくづく自分の園を大切にしながら、近隣地域や環境に目を配り、独善を慎むことが大切で、俯瞰的に自園を見つめる視野が求められます。

■未来を予測する力と相手の身になって考える力

動物の中で、未来のことを考えたり、人の気持ちになって物事を判断したりする知恵は、人間だけに与えられている能力です。(だと思っていました)私はこれまで文化人類学ではそのように解釈されていたと思っていましたが、近年ゴリラの研究(山極寿一2014)で、ゴリラも私たちと同じような社会性や家族愛があることを知りました。それぞれが尊重され、幸せを追求することのできる社会を形成する力はとても大切です。幼児教育においても、「私は私、私はみんなの中の私」ということを、いかに大切にするかの営みであるといってもいと思います。これは、民主主義の基本的理念と共通します。私だけ、今さえよければではなく、そこそこ幸せで、未来に希望を抱いて生きてゆく人に育つように私たちは毎日現場で心を砕きます。

ここのところのコロナ同調圧力や他人への監視の視線など排他的な傾向が強まっているように感じます。大正11年生まれの父母から聞いて心に残っている第2次世界大戦に向かう時期の日本で起こった空気感と、似ているのかもしれません。いやでもコロナで視野が狭くなってしまう現在、冷静に時代を見る視野を私たち大人は大切にせねばと思います。

参考文献:『「サル化」する人間社会』 山極寿一2020集英社インターナショナル

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会