周一ぶつぶつ

2022.11.17
新しい教育への模索

新しい教育への模索

小学校就学前の要領や指針が改訂され、小学校中学校の学習指導要領も改定されました。「主体的・対話的で深い学び」が目指され、一人一人の教育環境を最適化する新常態の教育へと舵が切られました。各小中学校などでも、「知識・技能」から「資質・能力」(表1)へと取り組みが始まっています。

これまでの日本の小中学生の学力は、OECDが先進諸国を調査対象として毎年実施するピザのテストによって結果が報告されています。総括すると…

  • 日本の子どもたちは、基本的な知識という点では世界トップクラス
  • 知識を創造的に使うという点でも、数学と理科については世界トップクラス、ただし読解については数学や理科より劣り、先進国の平均的なレベル
  • 創造性を現実的な問題解決に生かす能力は、世界トップクラス
  • 学力格差に関して、基本的な事項を理解していない子どもは少ない。ただし、学力には社会階層の影響が認められ、先進国と同程度に不公平な社会である。
  • 大人になったときの能力は、世界トップクラス
  • 学力の低下傾向は認められない

ピザ2000年「日本の教育はダメじゃない」小松光・ジェルミーラプリー著ちくま新書 引用

これまでの様々な報道やネットの教育に対する言説などを見聴きしていると、日本の子どもたちの学びが心配な状況にあるため、教育先進諸国を模範に教育を変えなければならないというメッセージが公的な機関からも発信されます。先進的教育環境視察に出掛ける教育関係者や、識者に諸外国の学びについてのレクチャーを聴く機会も多くあります。しかし、ピザの結果や25歳~35歳の学力をはかるピアック数理的能力の結果を見ると、日本はともに世界トップクラスなのです。一方、日本の子どもの学力は高いが創造力にかけるのではないかとの言説についてもピザの調査が実施されていて、これも決して日本が低いわけではないようです。私は何の根拠もなく、子どもたちの学習や、義務教育学校の体制が心配だ、と思い込んでいたのですが、実は先進諸国の中でのトップクラスは現在も変わらない事実を知りました。

現場に新しい教育方法や形態を持ち込み、日本の教育を大きく変化させる必要はなさそうだ、という考え方もできます。しかしOECDなどから発せられる教育の示唆は伝統的な教育から新常識の教育へと変化が求められていることも事実です。(表1)なぜこのような改革が求められるのでしょうか。

確かに、気候変動や大きな自然災害、貧困、飢饉や世界的な紛争の状況など、これからの時代は予定調和で右肩上がりとはいかず、複雑怪奇な時代を共存の視点を大切に生き延びていく人に育つための教育環境が模索される必要があります。日本の18歳は、社会に対する主体的な関りや世の中に関心を示す能動性(エージェンシー:変化を起こすために、自分で目標を設定し、振り返り、責任を持って行動する能力)は、18歳の国際比較において著しく低いものです。(表2)この調査結果をふまえると、新たなる教育的課題や資質や能力を求めなければならないことは明白となります。幼児教育から小学校教育への接続も着目されています。幼児教育が大切にしてきた、持続可能な地球の観点や、学びを自分事としてとらえる力、周りの人との共存し保育を捉えなおすことなども重要になっており、家庭と手を取り合って織りなす乳幼児期の教育/保育の重要性が今問われています。

引用、参考文献:●OECDEducation2030プロジェクトが描く教育の未来

白井俊著 ミネルヴァ書房 2020

  • 日本の教育はダメじゃない 国際比較データで問い直す

小松光/ジェルミー・ラプリー著 ちくま新書 2021

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会