周一ぶつぶつ

2023.03.20
希望をもって生きる

人間にとって、どんな時でも、どんな環境の中でも希望を持って平和に生きることができればそれは「幸せ」なのだと思います。そのような生き方を追求できる人間に育つにはどうすればいいのでしょう。この答えは、幼少期の育ちに関わる大人との関係や生活、遊びの環境にコツがありそうです。

心理学では人間の習性について次のように説明されます。人間は1/模倣と創造性(人まねとウソつき)2/異質性を排除する(同質を求める)3/共感性が欠如している(共感性は生得的ではない)4/秘密の宝箱を持っている(人には言えない内緒のことがある)、とされています。この習性から、周囲の人たちによる養護的関り、環境との関係や人との交流によって徐々に良き市民になるよう社会化していくのでしょう。その育ちの中で、自分のことだけではなく人と共存することや、他の人が喜ぶように配慮することで生きることの喜びになることを感じられるのでしょう。毎日子どもが繰り広げる園生活を見ていると、このまなびの要素が満載です。

私たちの意欲や希望を持って生きる能動性は、前頭前野と呼ばれる額(ひたい)の内側にある脳の部位が担っているといわれています。脳の育ちで、聴覚、視覚野の臨界期は6~7歳前後なのに対して前頭前野はゆっくり発達し、25歳くらいで成熟期を迎えます。それまではなかなか理性的な振る舞いや相手と折り合いをつけることは難しいこともあるでしょう。自分自身の思春期を考えても分かります。

そんな特性を持つ前頭前野ですがその部位が十分に育つためには小さいころから主体的に能動的に様々な遊びを楽しみ、仲間と豊かな関わりをすることによって前頭前野にドーパミンという物質が大量に分泌され、脳の育ちが促進されるのだそうです。ですから幼児期の子どもの毎日は、まさに「楽しくってしょうがない!」と思える環境で、「自己」と「他者」による社会的相互作用の有機的な繰り返しがなければならないことになります。

そのような意味からも、保育者の役割は、知識や技能の習得を目的にするのではなく、心が揺さぶられる環境の構成(心情の揺さぶり)、やってみたい、使いたい、遊びたいというやる気(意欲)がわき、遊びに向かう中で、仲間との葛藤や喧嘩が発生することもあります。そのような経験から、どのようにふるまえば楽しい時間が長続きするのかを模索し、ルールを守って楽しむ(態度の形成)賢さを獲得します。5歳児に見られる自分たちの遊びを俯瞰して感じられる知恵づきでもあります。

このような幼少期の充実した学びをもって小学校に進み、学習を狭い意味でとらえるのではなく、生活の中で社会全体の事象や興味などと広く結び付けながら学んでほしいと願います。これがプロジェクト型学習・アクティヴラーニングと呼ばれている学習方法です。その様な学びを経て、生活や社会に能動的にかかわり、主体的に自分の生きる社会が良くなるようにしようと考えられる人に育ちあがっていくのでしょう。

残念ながら、一国のリーダーの共感性が欠如していれば、他国に軍事力をもって侵略することも、両国の若者が戦争で大量になくなることもはばかられないわけであって、到底理解されることはありません。歴史に人権侵害、蛮行という汚点を残すことになります。

 

参考文献:「人の発達の謎を解く」胎児期から人類の未来まで

明和政子著 ちくま書房2019

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会