周一ぶつぶつ

2023.09.27
環境による教育と今後の評価

先日ある会議でお知り合いの方からこのような質問を受けました。「ECEQ®のコーディネーター講習を受けている中で、他園のECEQ®のステップ4の公開保育2園程参加したけれども、2園とも自由保育だった。自分の園は設定保育なので、コーディネーター資格の必須条件である自園の保育を公開することは難しいのではないか」というものでした。このような理解は結構広範にわたって理解されているようで、あまり問題にされることはないように思います。

幼稚園教育要領や保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に定められている総則などにも、一斉保育、設定保育はダメで、自由保育でなければならないなどの記載はありません。基本的に『幼児期の教育は、生涯わたる人格形成の基礎を培う重要な教育で、目的を達成するために、幼児の特性を踏まえ、環境を通して行うもの』と大くくりで規定されています。結論から言うと、目的を達成するために、一斉に取り組む保育であっても自由に子どもが選ぶ保育であっても、子どもの興味関心や関心が集まるような環境を整え、能動的にヒト、モノ、コトに関わりながら豊かな生活とあそびが保障されることが望ましいと言えます。したがって、同じことを同じようにすることが強すぎることは一人一人の興味関心がないがしろにされる危険性を含むことになります。

当園は、特別な日を除いて、朝登園してから身支度を整え、誰とどこで何して遊ぶかは子どもが決めることを基本とした保育の組み立てとなっています。たまに保育関係の見学者がおいでになられますが、「あけぼのは自由保育ですね」と尋ねられます。私は「あけぼのは設定保育です」とお答えするとキョトンとした顔をなさいます。誰とどこで何して遊ぶを自分で決める、ということは、保育者側が、子どもの興味関心がどのように働き、環境の構成はどうあればいいのかを仮説として設定し、保育室内や廊下、園庭などの環境を工夫する実験力が問われているのです。当園も遠足などに行きます。みんな一緒にバスに乗り、山に出掛け栗拾いを楽しむこともありました。これは一斉保育にあたると思います。事前にイガから栗を取り出し山に撒き、園児たちが拾いやすいように設定します。イガの中に栗があることも知ってほしいのですが、子どもが取り出すには少々の危険や困難もあってそのような配慮がなされます。また、転んでひざなどにイガが当たると危険なので、大方は取り除き安全性を考える設定を行います。そのような設定の中で一斉に栗拾いが始まります。普通は栗を拾うことが狙いになりますが、一生懸命袋いっぱい栗を拾う子どもももちろんいますが、虫好きの子どもは袋に一杯コウロギやバッタを入れていることもあるのです。ねらいをもって一斉に保育を展開しても、子どもによってねらいや内容は変化し、獲得される資質や能力、知識や技能は一人ひとり別々なのです。学んだ内容が個々違うので、個々の学びの違いを検証し、保護者と共有することも私たちの大切な作業となります。

保育者養成校などで、設定保育・一斉保育と自由保育などの概念をどのように学んでいるのか定かではありませんが、免許・資格をもって卒業してくる専門職の人も、その概念があいまいでバラバラなように思いますし、園長ですらそのあたりをはっきり説明できない人がいるのかもしれません。これは大変困ったことで、幼児教育の特性の理解が当事者である教職員に理解されずに保育が展開されていることを意味し、2020年に大きく転換期を迎えた令和の日本型学校教育の目指す、「一人一人の発達や能力はそれぞれ違っていて、個別最適な教育環境を整える」という考え方や資質/能力と知識/技能に加えて、それを社会の中でどのように発揮することができるのかという方向性もあいまいになることを意味します。

私たちは私立(プライベート)の園です。しかし、勝手気ままにどんな教育でもいいわけではなく、多くの公金が投入されている公共(パブリック)の施設でもあります。法律である要領や指針の理念をよく読み込み、それぞれの園が地域や園児の特性に合わせて、魅力的で自由性が大切にされる園を全教職員協働で創造しなければなりません。そのリーダーは言わずもがな、各園の設置者・園長です。 自園を近隣の園や小学校などにも公開し、園の考え方を伝え合い、協議することによってその園の保育が磨かれ、公共に近づく過程に導かれます。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会