周一ぶつぶつ

2023.09.27
子どもは何故遊ぶのか、遊ばなければならないのか

子どもたちの遊びを見ていると、幸せそうだなと思うときと様々不思議に思うこともあります。女の子はままごとやお店屋さんごっこを好む傾向があります。古くから続くままごと遊びですが、人気の主役はお母さんよりペットのほうに移っているようで時代が反映されています。男の子によくある遊びは「戦いごっこ」です。大きな自然公園に遠足に行っても、男子はすぐに棒っきれを拾い、チャンバラを始めます。また、テレビやYouTubeなどのメディアで、のべつ幕なし無料で配信される様々な番組を見ている男子は、「戦いごっこ」が好きです。小生の満3歳の男子の孫もご多分に漏れずラップの芯をもっては「ジイジけんかしよう。チョスッ・バシッ‼」と襲い掛かってきます。私が切られ役でバチバチたたかれ二人遊んでいると、このまま見過ごしていいんだろうかと妻は心配顔です。子ども同士が体をぶつけあって遊んでいる様子を見る母親は野蛮そうで、思わず「やめなさい!」と制止したくなるのではないですか。

一方、動物園の猿、実験用のラット、家で生まれた子犬たちも、くんずほぐれつじゃれあい取っ組み合い、かみ合いを繰り返しています。決して仮面ライダーやYou Tube を見ている訳はないのにです。ラットの研究では、よく仲間と遊んだラットと、遊ばなかったラットを比較する研究があります。幼いころに仲間から隔離されたラットは、成長したとき仲間のラットとかかわるのが難しくなることが分かっています。荒っぽい遊びをしていたラットはそうでないラットよりも柔軟に、臨機応変に対応できるようです。このように哺乳動物に普遍的とも思えるじゃれあい遊び方を見ていると、人の育ちにとって大切な育ちの意味があるのではないか思います。私たち人間には他の哺乳動物に比較して子ども時代が長く用意されています。そのことが将来変化にとんだ複雑な社会的な状況を一瞬で捉え、直感的に対応できる能力を持つことにつながり、頭がよく社交的な交流がなされます。社会的協調性を司るのは「前頭葉の特定の部位」が重要な役割を果たしていると考えられています。

遺伝子的にはチンパンジーなども私たちに似通っていますが、チンパンジーの子ども時代は生前3~4年位で、その後、群れから離れ他の群れの中で大人として生活するといわれます。人間は子ども時代をほぼすべて遊んですごしますが他の動物に比して大きな脳を育てるには長い子ども時代が必須なのです。

すべての遊びに共通する5つの定義として、

・遊びは仕事ではない

・遊びはただの無駄な作業ではない

・遊びは楽しい

・遊びは自然発生的なものだ

・遊びは他の基本的欲求、食物や水やぬくもりを求める欲求とは違う

とされています。遊びは大人から与えられるものではなく、子どもの中から湧き出る強い欲求に支えられているわけで、これを保証するのが私たち乳幼児教育・保育に携わる教員、保育者です。

現代はなかなか正規の仕事を見つけるのが難しく、バイトや非正規をつないで生活している成人が多いと報道されます。またそのような人は、結婚をあきらめる傾向が高く、そのことが出生数減少の一番の原因とされています。小さいころの遊びに講ずる環境が奪われることは、少子化の根本原因とも言えます。

私たち大人は、早くに文字を書けたり早く発達をしている子どもを見て「上手だね~、すごいね~」などとつい褒め言葉をかけてしまします。反対に遊んでばっかりの子どもに心配がよぎったりもしますが、自己中心的な時期をいかに長く保障されるかが、その人の一生を左右する可能性が高いことがわかってきました。幼児期は「人生の基盤を育成する最も重要な教育」と定義されるように、遊べる時間の質と時間、環境がとても重要で、子どもが育まれる家庭と乳幼児期保育の質が問われるのです。

(参考、引用文献

「思いどおりになんてそだたない」アリソン・ゴプニック著 森北出版2019

「文化的営みとしての発達」 バーバラ・ロゴフ著 新曜社2006

ページの
先頭へ

学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会