周一ぶつぶつ

2024.07.05
超スマート社会=society 5,0を目前に

国が発表したこれまでとこれからの時代のポンチ絵を見ていると、society0,1の狩猟採集社会から始まりこれからは同5,0超スマート社会、AIの社会に進むとされています。Society1,0は猟採集社会で、続いて農耕社会、そして産業革命を経てデジタルの時代が現在進行中で、次にはsociety5,0の時代が到来すると推論されています。この進みかたを見ていると、一つ一つの時代は同じような期間で進んでいるように見えるのですがそうなのでしょうか。

私たちホモサピエンスが誕生しアフリカ大陸を出て地球上に広がってから7万年ほどとされています。そこから食料を求めてあちこちに旅をし、その地に適応し定住して農耕・牧畜に移ったのは、1~2万年ほど前で、society2.0~4.0の時代は、人類史上の20万年の内、ほんの10%弱に過ぎないと人類学者は言います。後の19万年、全体の90%以上は狩猟採集の生活でした。2足歩行でしたが足も遅く体毛も少ないか弱き人間は、助け合いながら集まって生活し、周辺に食べるものがなくなれば他の地に移動しました。また村人と諍い(いさかい)が起これば村から出ていくという、非常に緩やかな集団であったようです。すべて食べるものは自らで探し採(と)り獲(と)っていました。

海や川に近ければ貝や魚、グロテスクなたこやイカ、カニやエビを獲り、山があれば山菜を採り、たまには獣が穴に落ちて食べることもあったでしょう。黒曜石を使って刃物も作っていたようです。野草や根、木の実や果物を探して、自分たちの食べられる分だけいただくのです。冷蔵庫や倉庫はありませんから、みんな平等に分け合い、必要以上に採ったりはしない。まさしく持続可能SDGsな生き方です。このような生活を原始的な社会と定義するのはあまりにも傲慢だと感じますし、かえって現在の文明は生き物として考えると退行している、ともいえるのではないでしょうか。

私の園にはボーイスカウトの団本部があり、私も隊長などをさせてもらいました。好んで隊長を引き受けたというよりも、たまたま園に団があって、せざるを得なかったというのが本音です。敬礼をしあう風土に違和感がありました。

しかし野外活動やロープワークなど大変勉強になりました。ボーイスカウトの様々な活動が最終的に目指すスカウト像は、「一人で原野にいてもナイフ1本で生ききること」と聞きました。イギリスで発祥した活動ですが、まさに狩猟採集の生活がイメージされています。人として完成した状態がこの状態であるとすれば、現代人は全く未熟ですし歯が立ちません。

私が小学生の昭和30年代、こうもり傘は高価で家では買ってもらうことはできません。通学のときにもビニールのカッパを頭にかぶり、走って登校します。登校の時間は晴れていても、帰りの天気予報なんて教えてももらえませんから、雨が降り出せばカッパの用意がなければずぶぬれになってしまうのが当たり前。初めて傘を買ってもらったときはうれしくって、小躍りしたのを覚えています。名前を書いてもらって大事に使いました。

現在では急な雨となればコンビニに駆け込み、安価なビニール傘を買い求め雨をしのぎます。雨が上がれば何本ものビニール傘が駅や道端に捨てられている、この光景を豊かとは言わないでしょう。少し高価でも、しっかりとした傘を30年以上大切に使うことと比べてどうでしょう。良品を大事に使うことと、安物を使い捨てすること、どちらが質素で合理的、環境にやさしいのでしょう。この様な価値について、家庭内で子どもたちと考える機会はとても大切だとおもうのです。

電車でたまたま空いている席があり、座りました。前や横にいる人のほぼすべてが下を向いてスマホに夢中です。このスマホ依存をスマート社会というのでしょうか?

Society1,0狩猟採集社会と比較してみるとわかりますが、集団のみんなはそれぞれ違うけれども、皆が生かされ幸せに共に生きることが考えられる集団のほうが進化しているのです。古代の遺跡から肢体が不自由な人のものと思しき骨が出土しているそうです。多様な年齢、人がそれなりに集団の一員として生かされていた永いsociety1,0社会があったのです。その結果として80億人もの人が地球上にここまで広がっているのでしょう。

Society5,0の時代に一番大切な素養は、狩猟採集時代・縄文時代大切にされた、生きていく力や必要なものを自分の手で作り出す賢い手、感性、愛他心など、共に生きる力が何によりも大切なのだと思います。大人のそばで見守られながら思いっきり手や足、頭を使って仲間とくんずほぐれつ遊ぶ経験が、幼少期の一番大切な環境なのだと思います。このことを、子育て世代の人たちと共有する事が、私たち園長の最大の仕事です。

参考文献:ヒトの原点を考える 長谷川眞理子著 東京大学出版会 2023

縄文からまなぶ33の知恵 はせくらみゆき著 徳間書店 2024

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会