周一ぶつぶつ

2024.11.13
子どもはじゃれ合いあそびが大好き

子どもたちの遊びを見ていると、幸せそうだな~と思う時や不思議だな~と思うとき、どこで習ったん?と不思議に思うときがあります。女の子はままごとや縄跳び、お店屋さんごっこを好む傾向があります。ままごとなどでも、主役はお母さんよりペットのほうに人気があるなど、喜べない変化もあるようです。

男子は何から影響を受けているのか、「戦いごっこやヒーローもの」が好きです。小生の満3歳の男子の孫もご多分に漏れずおむつに刀を差し込み、「ジイジけんかしよう。チョっス、バシッツ‼」と襲い掛かってきます。私が切られ役でバチバチ叩かれ、逃げ回り、二人して適当に遊んでいると、このまま放置していていいんだろうかと妻は心配顔です。You Tubeを見せていると戦いが限りなく続く番組や、ヒーローと怪獣の戦いなど、特に男子は食い入るように見ていることがあります。小さい頃にこのような映像を長時間観ているのは、将来が心配になったりもします。子ども同士が体をぶつけあって遊んでいる様子を見ても野蛮そうなので、『もう少し平和に遊べないの!』と言ってみたり、思わず『やめなさい!』と制止したくなることもあるでしょう。

一方動物の世界ではどうでしょう。動物園の猿、実験用のラット、昔、我が家で生まれた子犬たちも、小さい時にはくんずほぐれつじゃれあい、取っ組み合い、かみ合いを繰り返していました。動物たちは決して戦い合う番組やYou Tube を見ている訳ではないのに、です。ラットの研究では、小さいころによく仲間とじゃれて遊んだラットと、遊ばせなかったラットと比較する研究があります。幼いころに仲間から隔離されたラットは、成長したのちに仲間のラットと関わるのが難しくなることが判明しています。このように普遍的とも思えるじゃれあい遊び方を見ていると、子どもたちは自然の内に必要な学びを自ら選んでいることになります。

荒っぽい遊びをしていたラットはそうでないラットよりも柔軟に、臨機応変に変化に対応できるようです。このように哺乳動物に普遍的とも思えるじゃれ合う遊び方を見ていると、人の育ちの取って大切な育ちの意味があるのではないかと思います。ということは、このような遊びをしなかった、経験できなかった人は、長じて人との間合いの取り方やいなし方があまり上手ではない可能性があります。いじめの原因の中にも、この要因が隠れている可能性も否定できません。

私たち人間には他の哺乳動物に比較して長い子ども時代が用意されています。

その原因は様々な理由があるようですが、人間は他の動物より容量の大きい脳を持ち、この重い脳を保持できる直立2足歩行を獲得したと言われます。そのお陰で両手が使えるようになり、頭を首で支え、声帯がまっすぐになったことで様々な音声を発することができるようになったようです。

変化にとんだ複雑な社会的状況を一瞬で捉え、直感的に対応できる能力を持つことにつながり、そのような人は頭がよく社交的であるとみなされます。社会的協調性を司るのは「前頭葉の特定の部位」が重要な役割を果たしていると考えられています。

遺伝子的にはチンパンジーなども私たちに似通っていますが、子ども時代はせいぜい3~4年位で、その後、群れから離れ他の群れの中で生活するといわれます。人間の子どもはほぼ全て遊んで過ごしますが、他の動物に比較して大きな脳を育てるには長い子ども時代が必要なのです。すべての遊びに共通する5つの定義として、

・遊びは仕事ではない

・遊びはただの無駄な作業ではない

・遊びは楽しい

・遊びは自然発生的なものだ

・遊びは他の基本的欲求、食物や水やぬくもりを求める欲求とは違う とされています。大人から与えられるものではなく、子どもの中から湧き出る強い欲求に支えられているわけで、環境を整え、これを保証するのが私たち乳幼児教育・保育に携わる教員、保育者の大きな役割です。

現代はなかなか正規の仕事を見つけるのが難しく、バイトや非正規をつないで生きている成人が多いと報道されます。またそのような人は結婚をあきらめる傾向があり、年収600万円を超えないと子どもを設ける踏ん切りができず、出生率の減少の原因とされています。小さい頃の遊びに興ずる環境が奪われることは、少子化の根本原因とも言えます。

私たち大人は、相対的に早く字が書けるようになるなど早く発達をしている子どもを見て「すごいね~」などとつい言葉をかけてしまいます。この長い子ども時代の自己有能感-肯定観はとても重要で、他児と比較される相対的な評価は不要です。この遊んでばかりいる時期をいかに長く生ききるかが、その人の一生を左右する可能性が高いことがわかります。

幼児期は「人生の基盤を育成する最も重要な教育」と定義されるように、遊べる時間の質と時間がとても重要なのです。

(参考、引用文献「思いどおりになんてそだたない」アリソン・ゴプニック著 森北出版2019

「文化的営みとしての発達」バーバラ・ロゴフ 新曜社2006

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