周一ぶつぶつ

2025.03.10
幼児教育と小学校教育への連続性を考えます VOL.1

幼小の連続性を考える

■幼稚園教育要領の変遷

幼稚園教育要領が平成元年に改革され、保育の組み立ての視点でもある象徴的な六領域は五領域に変更されました。それまでの小学校の教科に準拠した領域から、子どもの生活や遊びを総体的にとらえ、その遊びを観る視点に位置づきました。強化と符合した保育の組み立てから、子どもの興味関心や主体性大切にする保育へと大転換されたとも言えます。

平成10年の改定では、子どもの発達は一様ではなく一人ひとりバラバラで、個々に相応しい環境設定の大切さが提唱され、各幼稚園もクラスみんなで指導計画通りに保育活動を進める保育から、一人一人の子どもの思いや選択を重視した保育活動に変更するよう徐々に変化しています。平成時代にはほぼ10年おきに教育要領は改定されて現在に至っています。

全国の先進的な幼稚園は園庭や保育室の環境を子どもがより興味を持つと思われる環境に変化させるため、これまでの平坦なグランドから、起伏にとんだ庭づくりに着手し、様々な樹木や果樹の植栽や花壇がつくられ水辺ができるなど、子どもたちの好奇心が喚起され、自然な環境で様々な体験や豊かな遊びが誘発されるような環境構成が行われてきました。

一方、建物の中の環境も、子どもが自ら選んで遊べるような玩具が揃えられ、自ら選択して遊べる環境が構成されました。年長のクラスなどにはボードゲームが用意したり、古着の子供服やアクセサリーなどもあって、ごっこ遊びも盛り上がります。

いつでも描画できる絵の具などの設定などの工夫もされています。従来一斉に描画活動をさせていた指導から、子どもが表現したいときに取り組めるような環境が設定されます。子どもたちは登園し身支度を整えると、「誰と、どこで、何して遊ぶ」を自ら決め、長い時間集中して遊ぶ姿が見られるようになってきています。その生き生きした躍動的な姿は、一人一人の資質・能力の萌芽が予見されます。そして、クラスのミーティングでは、自分の遊びを紹介しあうなど、ミーティングが行われ、翌日に向けて期待も膨らみます。

■6歳の誕生日の翌年4月には小学校就学させる義務が保護者にある

このように園生活を主体的に楽しみ伸びやかな毎日を過ごしてきた年長が、真新しいランドセルを背負って4月から小学校に進学します。日本の法律ではその年齢で小学校に入学させる義務が保護者に課せられています。地域によって異なるようですが、心身の障がいや発達にゆがみがあり、皆と一緒に授業を受けることが難しい児童も、校区の小学校に進学し落第することはありません。そしてその年度の学習が十分に達成していなくても次の学年に進級し、小学生は六年間で卒業します。

世界的にみると入学制度はさまざまで、欧米では何歳になろうとも保護者と子どもが小学校に入学したいと申し出れば、子どもを入学許可できる義務が国に課せられているところもあります。イギリスの小学校は望んだ時に入学できます。理論的には3歳でも10歳でも小学校入学が可能ですが、十分な成績が取れなければ落第もあります。知り合いのイングランドの家庭では、就学年齢に達しているのに2年間シュタイナー幼稚園に通い続け、2年間就学を猶予し8歳で子どもを入学させました。現在その子どもは二十を超え、パイロットとして世界の空を飛び回っています。この話を聞いたとき、保護者や子どもの主体的な選択が保証されていることに羨ましさを感じたことは事実です。

■幼児教育と小学校教育の接続

このような現実の中で幼小の接続が問われています。幼児教育は前述しましたように、子ども一人一人の発達の方向が目標となっています。しかし、小学校以降の学校は教科書によってその学年に習得しなければならない達成目標が示され、理解が未達成であっても授業が進んでしまう可能性もあり得ます。教師の力量にもよりますが、未達成の復讐は家庭に委ねられることも多く、共働き家庭などでは手が回らない状況も推察されます。

幼小の接続を考えるときに、乳幼児保育と義務教育学校教職員の根本的な「児童観」の理解やすり合わせなくして、形だけの幼小の接続プログラムを編成することは難しいと感じています。都道府県、市町村教育委員会で幼児教育を理解している担当者は非常に少ないのが現状です。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会