園の下の力持ち

2019.04.16
主体的に自ら遊びを選択するその前に

全園児の登園が 始まってから数日。週末に降り注いだ雨が、地中に設置してある雨水タンクへと大量に流れ込み、子どもたちが園庭で水遊びに使える自由な水は潤沢になりました。それに加えて、今まで子どもたちがなかなか経験できなかったであろう泥や砂、水の感触を遊びの中で体験し、エネルギーを最高潮に開放しながら、思い思いに遊びに没頭しています。歓喜にも似た子どもたちの声が通り過ぎれば、園庭は毎日水浸し。夕方になればいつもゲリラ豪雨の過ぎ去った後のようになっています。

一見するとエネルギーのリミッターが外れたように子どもたちがずっとこのままハードな遊び方を続けるような気になりますが、それはきっと今だけだと予想しています。今まで経験したことのない「楽しそうな遊び」にとにかく向かう子どもたち。確かにとっても楽しんでいることに間違いはないのですが、人間誰しも経験してみなければわからないことが沢山あって、手っ取り早く、目につく面白そうなことに子どもたちはまずは向かってみているという状況です。園庭には水遊び以外に沢山の遊びの仕掛けがしてありますし、園内環境については先の記事でも書いた通り、保育環境評価スケールECERSを指標として、子どもたちが主体的に選択しながら自らの興味関心を深めていくことが叶うような環境を思考を凝らして整えています。隣のクラスにあるあれで遊びたい、あれがしたい、そう思えば自由にそこで遊ぶことができます。園内を見渡して、子どもたちは自分に合った遊びを探し出し、選択し、そこから深く遊び込むことができるようになります。そこにはクラスや年齢の枠組みを超えた異年齢の交流が生まれ、発達の最近接領域に触れる機会に自ら身を置くことが可能となります。(参考:http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/090113ZPD.html

そしてまた、今後はクラスでの活動も徐々に増えていき、集団保育だからこそ公園で野放しに遊んでいるのとは違う経験をし、喜びや葛藤の中から一人一人がそれぞれのペースでルールや手法を学んでいきます。更に、教育要領に示された幼児教育の終わりまでに育ってほしい10の姿(要素)の育ちを、保育者も、保護者もポートフォリオを通してより分かりやすく多角的に実感していくことになるのだと思います。

先述の部分に、「仕掛け」という言葉を書きました。私たちは「子どもたちが園内で偶然出会う」こと・経験を、「保育者の意図的環境から必然的に出会わせる」意識を持って構成しています。そのことを「仕掛け」と呼んでいます。子どもにしてみれば、そこに水があるから、水遊びをする。そこに水があるのは子どもたちにとっては偶然のことです。ただ、我々はそこに水環境を配置することでその子どもたちの偶然を必然的に演出しているのです。意図のない環境には意味がありません。様々な角度から子どもの育ちを意識し、それを意図的に環境に落とし込むからこそ、子どもたち自身が選択する遊びの中から自ら獲得するものがあります。そのことを意識しながら、日々の環境設定に励みます。

この数日間だけでも子どもたちの様子は随分変化してきました。今後、一人一人の子どもたちが園内の遊びを一通り試した後で行きつく遊びに注目し、主体的に選択された遊びを今度はどのように広げ、更に深く遊び込むことができるかを探っていきたいと思います。

 

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会