学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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長い長いゴールデンウィークを明け、久しぶりの登園で子どもたちの様子も4月の初旬に戻ることが予想されましたが、一転、非常に落ち着いた子どもたちの様子です。
そんな中でも、日常的に園内の色々なところで、集団生活の中で思い通りにいかないことを理由に涙し、泣き叫ぶ声が聞こえてきます。特に今まで集団生活経験のなかった1号認定児の年少さんは、自分が使いたいおもちゃや遊具を自分のタイミングで、好きなように使えない環境に多く葛藤している様子です。これもまた、集団生活の中で園が仕掛けている環境構成の一つによって生まれていることです。全員に足りる量を用意するものと、全員で使えば不足するものを共存させることで、様々な子どもたちの姿が垣間見えます。
それぞれの自宅のように、誰にも邪魔されずに自分の玩具を自分のタイミングで使える環境下では起こり得ないことがあります。敢えて子どもの数よりも少ない数量の玩具しか配置せず、集団生活では自分のタイミングが都合よくまかり通ることだけではないということを子どもたち自身で学ぶきっかけを作ります。誰かが使っているものを使いたい、今私はこれで遊びたい。その時に他の子どもたちとのやり取りの中で、自分の思うようにいかない苦しさや、自分が使っているものを使いたいと言う友達に、玩具を差し出す優しさ、あとどのくらい遊んだら交代するね、という子ども同士の約束。そのようなやり取りを通して、それぞれの子どもたちの育つきっかけを作ります。特に集団生活の経験のない子どもたちは、このような環境の下で大いに葛藤し、時には手をあげたり噛みついたりして何とか自分の思いが達成されるようにする姿も見られますが、クラスの子どもたち、自分以外の他者から多くを気づかされ、ルールや約束といったものを意識せざる得なくなります。
一方で、保護者の方に一人一つずつ準備していただいているはさみやのり、自由画帳やクレパスなどについては、その子どもが能動的に一人で何かを作ったり、描いたりすることに向かうためには不可欠な道具であるため、子どもたちの意欲にストップがかからないよう十分な準備がなされるべきものであると言えます。
あけぼのでの園生活では、一人一人に「自由の権利」が与えられます。自分の好きなことを見つけ、深く遊び込み、自ら考え行動することの重要性はこれまでもお伝えしました。ただし、それが自由奔放を意味するわけではなく、「自由である」ために、「他者の自由」を侵害してしまうことは「わがままである」とされ、容易く受け入れられることはありません。例えば、クラスみんなで絵本を楽しんでいる時間。ある子どもが大声を出して立ちあがり、絵本を楽しんでいる他の子どもたちがそれを継続できない状況になったとします。その子どもにしてみれば、今この瞬間に声を出して立ちあがりたいという衝動、その子どもの「自由」を行使しているとも考えられますが、他方で絵本を楽しんでいる子どもの「自由を侵害」していることになるこの行動は、「わがまま」とされ、あけぼのの集団生活の中では認められません。「自由の権利」を行使するためには、「他者の自由の権利」を侵害してはいけないということを前提に、保育の中で個別の声掛けが行われます。
初めての場所で、新しい仲間と集団で過ごす日々は、いい意味で子どもたちの葛藤が渦巻く状態であり、その一人一人の葛藤から学び取る育ちにこそ、非認知能力として育まれるべき要素が散りばめられています。そしてその多くは、大人から教えられることではなく、子どもたち一人一人が遊びの中から獲得していきます。人を思いやったり、誰かと協力したり、道徳的規範を意識したり。言い出せばキリのない一瞬一瞬の小さな育ちに、大いに価値を感じながら、今日も目の前の子どもたちの気持ちに寄り添っていきたいと思います。