学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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子どもたちにとって、それぞれが育つ環境は育ちに大きな影響をもたらします。家庭環境は子どもたちが自ら選択できるものではなく、保護者の方の選択によって決まります。住む場所、食事内容、使われる言語、語彙の豊かさ、服装、日々の生活リズムなど、子どもがどのように生きていくかを保護者が決めると言っても過言はありません。
毎年、小学5年生と中学2年生を対象とした「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」が実施されていますが、大阪市の子どもたちの結果は、ほとんどの種目で全国平均を下回っており、大阪市在住の子どもたちの運動能力の低さは近年大きく問題視されています。大阪市としてもこの状況を改善すべく、様々な検討がなされているようです。
確かに(大阪市と言っても広範囲ですが)、あけぼのほりえこども園が所在する西区は、一昔前の姿とは違い、ほぼ全ての道路が舗装され、交通量の多い片側3車線以上の道路が東西南北に走っています。その中に所狭しとタワーマンションが乱立しているエリアにあって、運動の機会を得るためにはそれ相応の努力が必要とされます。にもかかわらず、公園にはボール遊び禁止の文字が大きく貼られ、子どもたちが唯一遊べる環境にも制限がかかります。もちろん、大人にとっては利便性に優れた好立地であることに間違いはないのですが、子どもが育つ環境、体を継続的に動かすことができる場所としては少し難しいところがあると感じます。また、3歳から幼児施設に通うようになれば、多くの子どもたちが玄関を出て、タワーマンションのエレベーターで地上へ降り、保護者の方の自転車に乗るか、園の送迎バスに乗り、こども園(幼稚園・保育所)へ送り届けられ、正門までのわずかな距離を歩くだけで後は園内での生活となれば、自らの足で歩く機会さえ著しく少なくなることは明白です。更に、園庭の無い施設に通う子どもであれば、その後の園生活でも施設内に留まる時間が多くなるわけですから、更に動く機会が乏しくなるのは当然のことです。
このような環境下にある子どもたちを想い、あけぼのほりえこども園では認可定員に対してできる限り大きな園庭を確保し、敢えて子どもたちの歩幅よりも少し大きな段差の築山を作り、普段歩くよりも大きな力を使わなければ上まで登れない設計としました。更に、大型遊具には積極的に歪んだ木を多用し、公園にあるジャングルジムのように規則的な幅では無い場所を多く作ることで、子どもたちの体幹が鍛えられるようにも工夫しました。
四月に入り、初めて大型遊具の滑り台で遊んだ子どもたちの様子を観察していると、何とか大型遊具二階まで上がれた子どもが滑り台から滑り降りた後、最後の着地で踏ん張れず、そのまま前のめりにこけてしまう姿を複数回目撃しました。体幹が弱いことの現れです。
野山を汗だくになるまで駆け回り、木の根に足を取られてバランスを崩すような経験ができない都会のコンクリートジャングルでは、園生活の時間、室内で補填でき得る運動遊びに加えて、上記のような環境構成で少しでも子どもたちの運動能力の向上に挑戦するしか方法がありません。そのような環境下で、通園時の自転車利用について一定のルールを設けることで、日常的な子どもたちの「歩く機会」を少しでも増やすことができないかと考えています。ルールの中身は至ってシンプルで、園を中心に半径1㎞以内にお住いのご家庭には徒歩での通園をお願いするものです。もちろん各ご家庭の事情によっては例外的に許可を出す場合もありますが、原則1㎞圏内に住む方には、子どもたちと手をつなぎ、園までの道すがら、大人だけで歩くのよりもずっと時間がかかることも理解の上で、徒歩通園していただいています。歩くことで子どもたちの体力向上を図ると同時に、自転車に乗ってあっという間に過ぎ去る景色では感じることのできない時間を大切にしていただきたいと願っています。春には春の、夏には夏の草花や小虫に気が付き、五感を働かせながら通う経験は、幼児期にしか経験できない保護者との貴重なものとなるはずです。そしてまた、交通事故の死亡事故の割合が最も多い小学校一年生を迎える前に、保護者の方と毎日の通園の中で交通ルールを学び、就学すると自分の足で通うことになる小学校へ向けたそれぞれの意識づくりも同時に行われることになります。
日々の家庭と園との相互の努力が、子どもたちの運動能力の改善に繋がると信じ、今後も更なる取り組みを続けていきたいと思います。最後に、山口県の教育者の方が謳われた子育て四訓を添えて。
乳児はしっかり 肌を離すな
幼児は肌を離せ 手を離すな
少年は手を離せ 目を離すな
青年は目を離せ 心を離すな
参考資料
■平成 30 年度全国体力・運動能、習慣等調査結果(大阪市の概要)
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000462203.html
(コメントには前年度比較で向上された点が多いが、全国平均より低いことに変わりはない)
■警察庁交通局「児童・生徒の交通事故」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/anzenundou/jidou-seitojiko.pdf