学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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小学校就学前の子どもに対する「幼児教育」というものが、日本では非常に残念なことに、本来の意味からずれて認識されています。それは、「教育」が、小学校以降に教室で黒板に向かって座り、漢字を習ったり算数をしたりすることを強くイメージさせるため、 “幼児教育”の”教育”という部分が、あたかもそれと同義であるかのような勘違いを引き起こしているのかもしれません。残念ながら、これが「幼児教育」として広く認識されているのは、実は大きな間違いです。
文部科学省の中央教育審議会初等中等教育分科会(平成16年9月29日)で、下記のような資料が配布されました。(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1395402.htm)
内容を要約すると、【幼児教育とは、自発的な活動としての「遊び」を重要な学習として位置付けるもので、生活や学習の基盤を培う学校教育のはじまりとしての役割を持つものであり、もっぱら知識のみを獲得することを先取りするような、いわゆる早期教育とは本質的に異なるものです。主体的な遊びにより好奇心が育ち、探索し、知識を蓄えるための基礎が形成され、様々な関わりにおける自己表出を通して自我が芽生え、他人の存在に気付くなどの社会への感覚を養います。また、目先の結果のみを期待しているのではなく,生涯にわたる学習の基礎をつくること、「後伸びする力」を培うことを重視しており、このようなことが大切にされている幼児教育は、小学校以降の教育と比較して「見えない教育」と言われることがあります。また、学校教育のはじまりとして幼児教育を捉えれば、思考力・判断力・表現力などの「確かな学力」や「豊かな人間性」、たくましく生きるための「健康・体力」からなる、「生きる力(非認知能力)」の基礎を育成する役割を担っています。】とのこと。
上記のように、国から発信されている「幼児教育」の解釈が、一体どの程度日本全体の幼児教育に対する理解と合致しているでしょうか。間違ってはいけないのは、ただ遊ばせておけばそれだけで子どもたちが様々なことを獲得していくわけではなく、資料の中に記載の通り、幼稚園教育要領等に従って教育課程を編成し、保育者の援助によって適切な施設設備の下に、組織的・計画的な指導を環境を通して行うものであることは言うまでもありません。ただ遊ばせていることと、組織的・計画的にそれを行っているのでは全く別物です。一昔前に根拠もなく、小学校以降の教育をモデルとした早期教育が良しとされた時代を振り返れば、こうあるべきだとか、今はこれが一番などと言われる幼児教育が、洋服や音楽が時代と共に移り変わるトレンドのようなものだと感じるかもしれません。ただし、実際に時代と共に手法や形を変えて変化してはいるものの、それはトレンドではなく、日本の幼児教育の在り方の「最善」に辿り着くための紆余曲折であるように思います。そして様々な手法(教育方法)の違いこそあれど、近年様々な研究によって幼児教育が検証され、最も重要であると広く知られるようになってきた「主体的な遊びから獲得される様々な要素」を探求している結果と言えるかもしれません。日本の幼児教育は先進諸国と比べればまだまだ発展途上であり、多くの研究結果を基に、日本全体での幼児教育の質向上が目指されています。
ここで保護者にとって悩ましいのは、小学校以降の教育と比較して「見えない教育」と言われる部分でしょう。何かができるようになった、とか、点数が大幅に上がったという目に見えるものは、分かりやすく、評価しやすいものです。その一方で、幼児教育は「木の根の教育」とも表現される通り、大きな木が育つために欠かすことのできない木の根を、広く深くさせるものであるため、今後どれほど大きな木が育つかは、育ってからの「結果」でしか判断できず、それは十数年後、数十年後に現れてくるものであるかもしれません。その時期に、とにかく浅く細い木の根でも良いから、大人が喜ぶために、上に大きく広げた枝葉を見たいと願うのは本末転倒なのです。
時代が移り、これまで人間が求められてきた資質も、機械やAIに取って代わられるものが増えていくことが予想されます。そのような私たちが未経験の新たな時代の中で、これまでの“間違った”尺度で最善だと感じるものを子どもたちに選ぶことは非常に危険です。今の子どもたちが大人になった時代を想像をすることは非常に難しいですが、今の大人が、これから大人になる子どもたちに必要な環境を正しい理解の上で提供し続けることが必要なのではないかと思います。あけぼのほりえこども園は、このような時代の中で、少しでも未来を見つめ、それぞれの時期に子どもたちが必要とする最善の時間・環境・人を整え、子どもたちと向き合っていきたいと思います。正解が見えにくいが故に、周りの情報に流されがちになることもあるでしょう。そのような中で、広く幼児教育の正しい理解が日本中の一般化することを願ってやみません。