学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
Copyright © AKEBONO Kindergarten Group. All Rights Reserved.
「ダメな子」とか、「悪い子」なんて子どもは、一人だっていないのです。もし、そんなレッテルの付いた子どもがいるとしたら、それはもう、その子たちをそんなふうに見ることしかできない、大人たちの精神が貧しい。
手塚治虫『ガラスの地球を救え(光文社)』
あけぼのほりえこども園は、様々な障がいを持った子どもも広く受け入れる施設です。65年の歩みを進める学校法人あけぼの学園のあけぼの幼稚園では、これが長年当たり前のことでした。現在、あけぼのほりえこども園にも様々な障がいを持った児童が在籍しています。ただ、この状況が年々変わりつつあります。
状況という言葉がここで相応しいのかどうかが微妙なところではありますが、確かなことは発達障がい児の割合が上がっていることです。昔から同じような特性を持った子どもはいて、現代になってそれが診断という形で明らかになってきているだけという学者もいますが、どう考えても現場で感じる相対的な比率が上がっているのです。
発達障がいとは、保護者のこれまでの関りが原因で起こっている後天的なものではなく、脳に何らかの障害をきたしている症状です。(虐待などによって起こる後天的な発達障がいがあることも事実ですが)ASDと呼ばれる自閉症スペクトラム障がい、ADHDと呼ばれる注意欠陥多動性障がいや、LDと呼ばれる学習障がいがその主たるものですが、個別の配慮を要する子どもたちは確実に増えています。有名な人でいえば、エジソン、アインシュタイン、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズもここに当てはまる人たちと言われています。どこかずば抜けているものを持っている一方で、人間関係を構築したり、空気を読んだり、気持ちを切り替えたりすることが難しいのが傾向として挙げられます。社会生活をスムーズに行うことが難しい場合から、普通に生活していられる場合まで、その内容は大小様々です。
一方で、集団生活の経験から我々保育者が気づく発達の歪みやその可能性について、保護者の方がそれを受け入れられないケースも実際に存在し、適切な援助や支援が人的配置の関係上難しくなることがあります。「うちの子に限ってそんなことはない」、そう思う気持ちは本当によくわかります。一度つけられた発達障がいというレッテルは、今後ずっと続いていくと感じて抵抗感を持つこともよくわかります。ただ、このままでは集団生活において大きな課題が残り、それによって子ども本人が本当に困ることに繋がります。更に、小学校への進学に向けて、課題がどんどん大きくなっていく場合もあります。
私立学校は、保護者の方に同意をいただき、人的配置や職員の研修、また文献購入などに充てるための補助金を申請して初めて多様な障がい児の受け入れ体制を整えることができますが、保護者の同意をいただけないまま、園の人員を絞り出したような体制で何とか運営していかなければならないケースもまた増えています。これにより、本当に必要な体制づくりができず、子どもたち一人一人に寄り添った丁寧な保育が実現できず、子どもたち自身にとっても、その子どもたちと接する大人にとっても困った状況になるのです。もちろん、通常学級しか持たない園で無制限にこれらの子どもを受け入れるのは、園運営として難しく、今、その大きな渦の中で苦慮しています。もちろん、できる限りの子どもを受け入れ、その子どものありのままを大切にしながら、それぞれの特性を伸ばし、社会でのルールを少しずつ学ぶことができるよう配慮したいという想いは大切にしたいのです。適切な支援の結果、集団生活の中で様々なことを克服し、診断が外れるケースもこれまで多く見てきました。そして何より、多様な人の中で過ごすことが、乳幼児期の子どもたちにとってとても素晴らしい経験になると信じています。
発達障がい大国とまで呼ばれている日本に、何らかの原因があることは明らかです。近年では農薬や添加物にその原因の一端があるのではないかという研究結果が出始めています。諸外国では使用禁止になっているような浸透性の農薬を、日本ではJA指定農薬として今でも使っていることは疑問の念を抱くに値するでしょう。それに加えて、日本人は年間平均8キロもの食品添加物を食べているそうです。8キロの食べ物(高級焼肉だったとして)を目の前に置かれて、全て食べきれる人がどれだけいるでしょう。知らず知らずに我々の体に、しかし着実に発達を歪める原因が蓄積していると思うと、恐ろしい話です。
どんな時でも、子どもたち一人一人に寄り添い、丁寧な関りの中から子どもたちの個性や特性を伸ばしていくことが大切な中、発達障がいという原因が特定されていない子どもたちの割合が増え、それでも保育の質が求められています。待機児童対策で沢山の園が出来る状況とは裏腹に、求められる保育の質は上がる。この逆説的な時代の中で、保護者の理解をいただきながら歩みを進める大切さ、家庭と連携することが不可欠な時代にしっかりと対応していかなければなりません。難しい時代です。