園の下の力持ち

2019.08.10
先生というお仕事

元々私が海外で仕事をしていたこともあって気が付いたことですが、外国人(と、本来一括りにはできませんが)のワークライフバランスの感覚は日本人のそれとは比較にならないほど敏感であったように思います。午前中から終業時間を意識して、そこまでに仕事が終わるように段取りする。(たまに仕事が終わってないのに帰ってしまうスタッフには困りましたが…)会議の時間は沢山話せば深い議論ができたと錯覚せず、決められた時間で内容の濃い時間にするために予め会議参加者が自分の意見を持って集まる。オンとオフを切り替える。終業時間になればパソコンを閉じて帰宅準備をする。このメリハリをつけるための意識が高かったように思います。そしてその意識が私自身にも自然と刷り込まれたことも事実です。

その一方で、先生という職業に就いてみると「マニュアル作業が丁寧で温かみを感じさせる」という”謎の圧”を感じることに多く直面しました。手書きだから先生の人柄が出る、とか、手作りの玩具だから子どもたちも優しく扱ってくれる、とか。このような得体の知れない”謎の圧”が先生たちの仕事を増やし、この仕事を長く続けながら家庭を持つことを困難にしていると確信し、仕事の見直しを行うことにしました。(もちろん保育教材を組み合わせて簡易な玩具を日々作ることはあります)結婚して子どもができても、ずっと働き続けることのできる環境を模索する、いわゆる保育業界における「働き方改革」です。当初はずばりサラリーマン的な発想で戸惑った職員もきっといたと思いますが、職員からのヒアリングを経て、様々な検討を行い少しずつ実行に移しました。例えば、子どもたちの名前のハンコを一枚ずつ押して更に手で折っていた配布物は、IDPWを打ち込むことで保護者だけが見られる専用のプリントページをウェブ上に作って配布物をほぼ無くしました。8時間の就業時間の中でずっと子どもに接していれば、それ以外の時間(残業)でしか保育準備や会議ができない体制では保育の質が上がらないと、保育から外れ、更に保護者とも接触しないノンコンタクトタイムを設け、自らの保育計画を見直したり職員同士で議論したりする時間を確保しました。電話予約か窓口受付でしか対応していなかった預かり保育にはホテルの予約サイトのようなシステムを導入し、一括してデジタル管理できるようにしました。毎日の保護者との交換日記化していた連絡帳は、連絡事項を伝える本来の使い方を徹底してもらい、代わりに育ちを可視化する「ポートフォリオ」を月に一枚作製して保護者とそれぞれの子どもの育ちを共有することで、先生たち自身の子どもの心の読み取り力にも変化が見られました。

先生たちもみんな人間。本当はアフターファイブを楽しんで、オンとオフを切り替えながら仕事の質を上げなければ、きっと消耗してしまうのに、朝から晩まで気を使いながら神経を削って、やっと倒れそうになりながら家に帰り、気が付けば朝までソファで爆睡。これでは保育の質が上がるわけもありません。「先生が人間である」ことがどこか忘れ去られる傾向がこの国にはあります。恐ろしいことです。先生だって腹も立つし、お腹も減るし、眠い時もあるのに。

まだまだできることは山のようにあります。少しずつ取り組みを進めていきたいと思います。きっとこのトライが大きな成果につながることを信じて、幼児教育界の当たり前を壊しながら、同時に新しいものを組み立てていきたいと思います。

Rome wasn’t built in a day(ローマは一日してならず)

 

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会