園の下の力持ち

2019.09.07
環境を紐解く

あけぼのほりえこども園の環境には、実際に訪れて見ていただかなければわからない沢山の仕掛けがあります。その一つ一つには意図があり、それを十分に子どもたちが遊び込んで初めて園舎が呼吸する、そんな感じがします。恵まれた環境に感謝をしつつ、その環境を更に生かす方法を常に模索しています。

都会の真ん中に位置しているが故に、普通にしていれば出会わない豊かな草花、そしてそこに集まる小虫に触れられる機会をいかに生み出すか。三階屋上部分にはそれを少しでも補うための「空庭」を作り、多くの種類の野草(雑草)を植えました。今は人の背丈よりも高い草花が茂っています。産み落とされた蝶々の卵から自然に青虫が生まれ、その青虫をクラスに持ち帰って育てた子どもたちは、生き物に対する興味関心の高まりを感じることができました。今は鈴虫の声が少し落ち着いた秋の始まりの風に乗って気持ちがいい場所になっています。

もちろん中々経験できない畑活動を可能にする「屋上菜園」も作りました。今年は化学肥料を使わず無農薬でとまと、なすび、きゅうり、枝豆、パプリカ、唐辛子、オクラ、ピーマンなどを作り、クラスでのクッキング活動を通して栽培した野菜を自分たちで食べました。それにより普段野菜を食べなかった子どもが野菜を食べ始めるきっかけにも繋がったようです。野菜嫌いの年中の女の子が、作った枝豆のあまりの美味しさに、みんなで食べた後の枝豆の皮を口いっぱいにほおばる姿まで見られました。また、野菜を輪切りにしての野菜スタンプで表現遊びにも発展させました。

各保育室の間には、異年齢の交流が生まれるように壁中にチョークで絵が書けるコーナースペースを設けました。今後子どもたちの興味関心を見極めながら、このスペースを使って子どもたちの制作活動の拠点につなげて生きたいと思います。大胆に壁に大きな絵を思い思い書くことができるこの環境もまた、家庭では中々味わうことのできない環境であることは言うまでもありません。

そして我々の保育の考え方からすれば当たり前のことではありますが、基本的に保育室内にある「全ての家具が可動式」です。子どもたちの生活や遊びを見極め、機動力を持って適宜家具のレイアウトを変化させながら子どもたち一人ひとりの遊びの広がりをいかに生み出していくことができるか。固定されたロッカーが壁を取り囲む保育室では中々できない保育展開を可能にします。また、保育室の奥には壁が無く、横並びの保育室は常に繋がっている状態です。隣同士のクラス配置が年齢ごとではなく、バラバラの年齢になっていることで異年齢の交流がより生まれやすくなるように環境から導きます。更に、使う家具にもとことんこだわりました。島根県出雲市にある家具製作所で幼児用椅子、机、お道具箱棚は特注で製作しました。安いとりあえずのものを買い換えながら使うより、本物を長く使うことの意義を子どもたちにも感じてもらいたい。そういう感覚です。

シリアウカフェ「ポレポレ」は、地域の子育て世代の方への各種イベントへの活用を視野に入れた空間で、普段は子どもたちの絵本の部屋です。様々な活用方法をイメージしながら、机の下の部分は全て絵本棚となっていて、机を取り外せば一つ一つの本棚に早変わり。レイアウトを変えればイベントスペースになるようにしてあります。転入の多いエリアでもあります。孤育てに悩む地域の方と少しでも今後繋がって力になれたらいいなと思っています。

園庭環境は特に力を入れて構成しました。地中には4.8トン分(1.6トンx3つ)の雨水タンクを備え、園舎の屋根に降り注いだ雨水を貯水し、子どもたちの水遊びのために自由に使えるポンプを直結させました。更に、子どもの一歩よりも少し大きい段で構成された築山の上からもこの水を使えるようにつなぎ、その水は川となり、池に繋がる構造にしました。大型遊具は様々な運動機能の向上を目指して、引っ張る、ぶら下がる、登る、滑るなどの動詞から構造を検討していきました。奈良県吉野市にある銘木屋さんまで直接使用する木を選定に行き、それを大型遊具に落とし込んでもらいました。超が付く特注品です。

全てここで生活する子どもたちのために考え、取り組んできたことです。園内で生活する、子どもたちの楽しそうな笑顔を毎日見るだけで、ここに至るまでの大変だったことを吹き飛ばしてくれるような気持ちになります。これからも、この園で育つ子どもたちがより良く生活することができるための努力を、職員一同惜しまず続けていきたいと思います。

子どもたちの様子はギャラリーからご覧いただけます。

 

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会