園の下の力持ち

2019.11.10
ダンゴムシ

制度や教育の本質についての記事が続いてしまったので、園内の様子も少し書きたいと思います。

 子どもたちにとって比較的早い段階で出会う虫は、子どもたちの目線に最も近い地面を這う虫です。蝶々やトンボなど、飛んでいる虫は顔を上げていなければ気づくことができませんが、自分の足で歩きながら地面を動く何かに気づき、そして手を伸ばす。そんな時そこにいるのは大抵ダンゴムシです。ダンゴムシは子どもたちの格好の遊び相手として、生命に対する意識を学ぶ恰好の教材となります。よくよく観察してみると、見た目はまるで古代生物さながらの甲殻を持ち、14の体節と14本の脚、2本の触覚があります。更に、前面には目がありますが、視力はほとんど無いそうです。そんな見た目でも、子どもたちにとって興味関心の中心になることがあり、とにかく大量に捕獲されることがありますが、冷静に考えると子犬や子猫のような可愛さは微塵も感じられないような気がします…。

園内には正門を入ってすぐ右に植え込みがありますが、そこがダンゴムシの発生多発エリアとなっているようです。子どもたちは朝の登園時に必ずそこをチェックして、今日もそこにダンゴムシがいることを確認し、そして荷物をロッカーにしまって身支度を整えたら、植え込みに群がり砂の中にいるであろうダンゴムシを各々必死に掘り漁ります。動くものが見えると手を伸ばすその先にダンゴムシではない細長い虫がいると、それはゲジゲジです。残念ながらゲジゲジは不人気のようです。

ここで大人には困ったことが発生しています。モグラ顔負けでダンゴムシを掘り漁るために、まだ根がきちんと張っていない植栽がそっくりそのまま浮かび上がってきてしまっているのです。子どもたちの興味関心が広がる活動の大切さと、園の植栽の存続とのせめぎ合いが起こっているのです。あまりにも上手に、丁寧に浮き上がった植栽の根の塊に脇目も振らず、それでもその植栽が倒れないギリギリの節度を弁えているかのようです。砂浜で棒を立てて周りの砂を少しずつ除けていく「棒倒し」に似たダンゴムシ捕獲作戦は、大人が植栽を生かすために子どもたちにどのように声掛けをするべきか、職員間での議論に発展しています。

子どもたちの保育環境を整えておくという点では、ルールや決まりで子どもたちを制限してしまうことは大人にとっては簡単な方法です。ただ、豊かな感性や表現を支える保育環境を構成するという考え方の下で、子どもたちが大いに楽しみながら興味関心に向かって没頭する姿を見て、何でも簡単に禁止にしてしまうことは果たしてどうなのだろうか。判断の基準を常に子どもに置く子ども中心主義の観点から考えた場合、この判断はどうあるべきか。

日々の保育という営みの深さを感じながら、大人も子どもも対等な関係の中でこの着地点を模索していきたいと思います。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会