園の下の力持ち

2019.11.25
これからの学力が問われるもの

北海道でロケットや人工衛星などの研究を行っている株式会社植松電機の代表取締役社長である植松努氏のブログの中に、下記のような一文がありました。

「僕は小学校の頃、テストが嫌いでした。なぜなら、わからないことがあって、テストの点数が低くても、リトライが許されなかったからです。授業はすぐに次の内容に行ってしまいます。そのたびに「苦手」が増えていきました。」

2019年度で廃止されるセンター試験をはじめ、大学入試がAO入試等多様な方法の導入により、今日本で問われている学力というものの変化が形になって表れ始めていることを実感します。「何かを知っている」から「問題解決能力」への転換が、大学入試の現場でまさに具現化されようとしています。

もちろん国としての教育の指針となる各教育要領についても、これまで紹介してきた通り、改訂を伴って考え方とその方向性が改めて修正され、施行されています。

しかし、必要とされる学力やそこに至る方向性が示されたとはいえ、まだまだ課題は山積みです。

全国学力テストで実施されるAB問題についてでは、知識を問う「A問題」に比べ、知識の活用力を問う「B問題」では大きく回答率が下がってしまうのです。自分自身の過去に照らし合わせてみても、持っている知識をテストの出題に合わせて問題解決のために活用することがすごく難しく感じていた気がします。

この問題では、まず棒グラフ上で満月の直径を10とした場合の14%大きいという概念が理解できているのかが試されます。更に、最小の満月の直径を20㎜とした場合、それ対して14%の大きさが最大の満月の大きさであることを1.14で掛けて計算し、それに対して100円玉(22.6㎜)と500円玉(26.5㎜)の大きさどちらが近いのかを比較することさえできれば難なく解くことができます。しかしながらA問題で20㎜の14%の値を導く計算ができても、また別のA問題で二つの大きさを比較してより数の近い最適解を導くことができても、二つの基礎的学力を一つの問題に応用することが出来なければ解くことができません。これぞ知識はあれどそれを活用できない子どもたちを生み出してきた結果であり、学びが生きた学力に結びついてこなかった学校教育の現実です。学んだことを実生活に落とし込むためには、持っている知識を柔軟な発想と考える力に転換することが最も必要とされます。そしてまたこれからの時代の中で、最も求められるのがこのような生きた学力であるとされていることは、学校現場、授業の手法それ自体を変えなければならない大きな転換期であると言えます。

そんな中でも、幼児教育の現場は植松氏の言うところの「リトライ」がそれぞれ子どもたちに認められる数少ない場所であるかもしれません。もちろん場合によっては上手くいかないから諦めてしまうこともあるかもしれませんが、上手くいかないことをそのままにせず、何度でも心ゆくまでチャレンジすることのできる環境、雰囲気があるからこそ、子どもたちは努力した分、達成感や経験を得ることができる貴重な体験を日々の生活の中で得ることができるのだと思います。

スポーツの世界ではよく「ミスを恐れるな」という言葉が使われますが、これは失敗を失敗のまま終わらせず、そこに辿り着くまでの試行錯誤の結果から生み出された成功体験を土台に、本来の力を存分に発揮して思い切りチャレンジするという考え方です。学校教育においても、「失敗」「間違い」は当たり前で、その経験を「悔しい」と感じて克服することが当たり前になるような、そんな雰囲気の中で子どもたちが育つことが今後最も求められることなのかもしれません。

最後に自動車メーカーホンダの創業者本田宗一郎氏の名言を。

「日本人は、失敗ということを恐れすぎるようである。どだい、失敗を恐れて何もしないなんて人間は、最低なのである。」

 

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会