園の下の力持ち

2020.01.15
火鉢とお餅

本格的な冬の到来の季節。とは言えあまりにも緩やかな寒さは、どこか凍てつく感が少なく、イチョウの葉が全て落ちていたり、便座が冷たいのにそのまま座った時のドキッと感くらいでしか冬を感じることができていないような気がします。北海道ですら雪不足で、例年雪に囲まれる新千歳空港でさえ、今は空港周辺の道路がそのまま見えているそうです。これが温暖化の影響であるとするのであれば、ここ最近の冬の中でも類を見ないほどの温暖な今年の冬は、地球の秩序が更に変化しているとしか言えないのではないでしょうか。

とは言え子どもたちは今日も元気に外遊びを続けていますが、走り回って身体が暖かくなっていても、外で暖かい場所の確保がしたい。本当は園庭の真ん中で毎日焚火をして、「火を知る」「煙を知る」ということに触れながら暖を取ることができるならそれが理想ですが、近隣の方々への煙を考えると焚火をするわけにもいかない。あれこれ考え、結果として園に「火鉢」を購入しました。残念ながら焚火とは違い、火が上に上がったり煙がもくもくでるものではなく、いこした炭が赤くギラギラと光っているように見えるものではありますが、子ども達の環境には逆に向いているものかもしれません。

今の子どもたちは、生の「火」を見て、どの程度近づいたらそれが熱く感じるものなのか、そしてまたそこから発される「煙」のにおいは、良いものが燃えている時と悪いものが燃えている時をかぎ分ける鼻が鍛えられる機会が少なく、火や煙から身の危険を察知する能力を獲得する機会がほぼ失われています。その中で火の怖さ、そして有意義さを伝えることの重要性が教育の場としてのこども園にも課されていると考えます。

もちろん保護者の方にしてみれば、子どもが簡単に近づける火があることは危険なだけなのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、子ども達との対話の中で、火を間違った方法で扱わないことを学びながら火の有意義さを知り、知識と知恵に変換していくことのプロセスの中に、火そのものを遠ざけることはできません。

18日の始園式に(通常は11日が鏡開きの日とされていますが)、鏡餅に飾られている橙や串柿、ウラジロや昆布などの意味を伝え、日本の伝統文化を子どもたちに話す機会を持ち、その後鏡開きを行いました。そして鏡餅に使われたお餅を食べることでその一年の無病息災を願うという文化を体感すべく、細かく切ったお餅を火鉢の上の網に乗せて焼き、醤油をつけておかきのようにして食べています。文化と食育が交差する冬の一大イベントです。一つ食べた子どもがもっと欲しいもっと欲しいと群がりながら、それでも毎日少しずつ、楽しさを引き伸ばしながら多くの子どもたちにこの活動が届けばいいなと思います。夏には夏の、冬には冬の活動から、子ども達の思い出が深く刻まれる喜びを感じながら、明日もまた火鉢でお餅を焼きます。

 

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会