園の下の力持ち

2020.06.30
『保育サービス』

「保育サービス」という言葉がキライです。

その一文から始まる入園案内のパンフレットが目を引く、とある園があります。引き込まれるようにその言葉に込められた園長先生の想いを感じ、そして共感しました。

そもそも幼稚園・認定こども園などは教育施設であり、サービス業ではありません。内閣府のHPにさえ保育サービスという言葉が使われていますが、今すぐにでも訂正していただきたいと感じます。我々は、都合の良い利用時間を提供する託児サービスを行っているわけでも無ければ、教職員はサービス業に従事していると思っているはずもありません。しかし残念なことに、乳幼児施設が子どもを一定時間預かってくれる都合の良い場所としか考えていない方も世間一般には存在しています。(あけぼのほりえこども園の保護者にはそのような方はいないと信じていますが)もちろん家庭の状況を考えれば両親共に就労しなければならないご家庭が多くなっていることは事実で、福祉の観点から考えても受け入れなければならない子ども達というのは確かに存在します。そしてそのような子ども達にとっては、子ども同士の集団生活の中で社会性を獲得したり、自我が発揮されたりすることは大切な意味を持ちます。ただ、絶対的安心感の中で過ごすことのできる保護者と共にいられる時間が何よりも重要な意味を持つ時期に、長時間保育を受けざる得ない状況は望ましいものではありません。どんなに素敵な保育を一生懸命やっている園に通っていたとしても、保護者との心の通った時間を過ごすことには到底敵いません。週末だけたっぷり一緒に過ごせば平日は時間が取れなくて当たり前でいいなんていうことは全くありません。

そもそも多くの国との比較の中でその危険性が指摘されていることとして、日本の「長時間保育の常態化」があげられます。乳幼児期に獲得される自分以外の他者に対する「愛着形成(アタッチメント)」は、その後の人格形成に大きな影響を及ぼします。そのようなことが分かっていながら、日本の保育時間は保護者の労働時間と比例するように10時間を超える場合も多く、働く時間が長いことが良しとされてきた日本人の勤勉性からもたらされた現状が、強いて言うならば親としての子育てを半ば放棄している(育児放棄:ネグレクト)状況を生み、乳幼児施設での長時間保育に任せっきりになっている場合さえあります。これは保護者が望む状況とも違う場合が多いとは思いますが、全く良いことではありません。

諸外国の例を見てみるならば、社会保障の点では少し違いはありますが、オランダでは男女ともにパートタイム労働の割合が高く、両親いずれも週4日勤務にすることで、保育所の利用を週3日にするなど働く時間を短くし、その分働いていない日には親が子供と過ごす時間を長くしようという動きがあります。また、ノルウェーでは両親とも育児休業をとりやすくすることで、0歳児の保育は原則していません。そうすることで、親と子の関係性を作り、その後の社会生活に向けた心理的基盤を強くすることが可能となるからです。

生きるために働く、家族を食べさせていくために働く、もちろんそれは必要不可欠なことであり、それなしに生計を立てていくことができる人など殆どいないでしょう。ただし、今回のコロナウィルス感染拡大の中で、日本に限らず多くの国でも働き方に対する見直しや改革が起こりつつあります。オフィスを解約する会社さえ出てきています。日本人があまり意識してこなかった、ワークライフバランスが今回のコロナをきっかけに広く意識され、そのことによって親と子が日常的に、当たり前のように多くの時間を共有できる社会が来ることを願います。

 

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会