学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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あけぼのでは、子ども達に対する声掛けには“肯定語を使う”という基本ルールがあります。時として保護者の方から「もう少し厳しく伝えてほしい」というお声をいただくこともありますが、先のブログにも書いた「大人と子どもの相互理解」の下に生活を組み立てていくという大切にしたい想いは、この肯定語を使ったコミュニケーションでより達成されやすいと考えています。もちろん、危険を伴うような場合にはしっかりとその都度ダメであること、その理由を伝えますが、肯定語を使うという基本ルールの中で強弱をつけた表現を使い分けているということができるのではないかと思います。
肯定語を使うことで、これまであけぼのでは大人と子どもの相互理解を深める働きがあると考えていました。しかし、それに加えて実は言語体系的にこれが裏付けられることが分かりました。
「ピンク色の象のことを、絶対に考えないでください」
今、あなたの脳裏には、ピンク色の象が浮かんでいたのではないでしょうか?「絶対に考えないで」とお願いしているにも拘わらず、あなたは結果的にピンク色の象のことを考えてしまいました。これはあなたが悪いのではなく、言語体系に理由があります。私たち(特に日本語で思考する私たち)は否定形では理解がしづらいのです。だからこそ、「してほしくないこと」は「肯定形」で伝えるようにしましょう。
「廊下を走るな」→「廊下を歩いてください」
「ごみを捨てないでください」→「ごみ箱に捨ててください」
「遅刻をしないでね」→「時間どおりに来てね」
出典:『今いる仲間でうまくいく宇宙兄弟チームの話』長尾彰
実際、自分が何かを伝える際の表現を都度深く考えることが無い場合も多いと思います。そういった中で、あけぼので働くようになって実際に「肯定語を使う」というルールの中で保育をしている先生たちから、
「今まで自分の伝えたい事と同じことを別の言い回しにすること自体を考えたことが無かったが、子どもに対して同じことを肯定的な表現で言い換える努力をすることで、子どもに対してだけではなく、他人に対しても、更には自分自身でも会話の印象が柔らかいと感じられるようになった」ということを聞きます。
相手に対して伝えたい、伝えている内容は同じであるにも関わらず、その言い回しの妙によって印象を変えることにも繋がっていくのです。日本語の持つ表現の多様さ故に、意図せず強い印象を与える言い回しになったり、逆に遠慮した気持ちで言いたいことを遠回しにし過ぎて本当に伝えたいことが伝わりきれなかったりすることがあります。「言霊」という言葉がある通り、言葉には魂が宿っていると考えられてきた日本語という言語体系の中で、一つ一つの言葉を大切にしなければならないと思います。その中で、表現を「肯定語」で行う習慣が出来れば、今まで感じたことのない新しいコミュニケーションの形が生まれるきっかけになるのではないでしょうか。