園の下の力持ち

2021.04.13
『スマホ脳』

今書店を訪れると、黄色に青のカバーが印象的な「スマホ脳」という書籍が話題の本として並べられています。(ちょっと前に流行した「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」という本の配色に似ています)。

スマホは、すでに人の生活には欠かすことのできないツールの一つとなっていることはもちろん否めませんが、人がスマートフォンと呼ばれる万能型小型パソコンを常に持ち運んでいる世界を15年前にどのくらいの人が想像していたでしょうか。様々な分野での技術革新が起こっても、大幅な転換は50年単位で変化してきていたのがこれまでの産業社会でした。

一方で、多くの人の手にあるiPhoneは、2007年6月29日に発売されました。今から14年前です。スティーブジョブズが歴史的な製品のリリースをしたことが、まだ14前のことです。今の中学三年生が生まれた年と考えれば、本当にほんの少し前の出来事です。しかしながら、インターネットという大きな情報革命の中で、当時は「ずっと折り畳み式のガラケーでいい」と思っていた人も、次第にその波にのまれ、持っていることが最先端というよりも、持っていないほうがおかしい「当たり前」へと変化しました。それは、人間がこの社会で生きていく中で便利すぎるツールだということを認識したことに他なりません。これまでの産業革命の変革のスピードから考えれば、この情報化社会における技術革新による生活様式の変化のスピードは3倍以上になっているということです。このスピードで行けば、テレビでお馴染みの22世紀のネコ型ロボットが活躍するのに、もしかしたら22世紀を待つ必要がないかもしれません。

「スマホ脳」を読み進めると、これまでの自分の生活を見直すべきなのではないかという思いに駆られます。アップルの創業者であるスティーブジョブズが自分の子どもにはスマホを与えなかった。そして持たせた後はかなり厳しい使用制限をかけていたということは、開発者として売れるものは作るが、その中毒性を自分の子どもに体験させることは危険だと認識していたのではないか。フェイスブックの「いいね」ボタンを開発した担当者が、とんでもないものを作ってしまったと後悔しているというストーリーには、少なからずスマホの中のコンテンツに夢中にさせることで生まれる弊害を実感しているからではないか、そのように読み取れます。

人を惹きつけて離さない「中毒性」をいかに作っていくかを開発者の立場では考えていくのは当然のことですが、そのようなアプリやコンテンツで溢れたスマホを常に持ち運ぶことで、人の弱さにつけ込み、中毒症状を引き起こすということは実に危険だと感じます。実際SNSに投稿したものにたくさんの「いいね」がつくことで安心感を得る。これは、脳の報酬中枢を満たそうとする行為であり、その結果スマホにくぎ付けとなり、脳を常に刺激し、その結果ひどく脳が疲れ、心の病を助長することに繋がっていると書かれています。

また、電磁波についても懸念されています。とある町の保育園のすぐ横に4Gの基地局ができて以降、子どもたちに鼻血が出ることが多くなり、基地局を撤去したらそれが収まったということを新聞の記事で目にしました。さらに、4Gを遥かに上回る通信速度の5Gが普及し始めていますが、5Gの基地局の近くで大量の鳥が死んでしまったということも報告されています。

コロナウィルスのように瞬間的に大流行して人の命を奪うような脅威には見えないものの、常に身近に携帯しているスマホが発する電磁波が自分たちの命・遺伝子などにどのような影響を及ぼしているかの研究もこの15年程度で少しずつ進んでいるようです。もしかするとボディブローのように自分たちの命を削り、自分の子ども、そのまた子どもといった後世への負の遺産を蓄積させているかもしれないと思うと、恐怖でしかありません。ただ、このことについてまだはっきりとわかっていないことが多い故、人の意識というのは便利さを求めつつ、リスクに目を背けているのだろうと思います。

元日本マイクロソフト社長の成毛眞さんの著書「2040年の未来予測」という本の中で、テレビを一日180分(3時間)以上見る日本人の割合は、約3割ということが示されています。テレビを「ながら見」しつつ、スマホをいじる。手元のスマホ画面とテレビの画面からの光を浴びながらの生活が、やはり人を豊かにするとは信じがたい。

子育ての中でスマホやタブレットといったものを使って子どもたちを惹きつけ、その間に家事を何とかこなすというご家庭もあると思います。15年前には存在しなかったツールで子育てをするそのこと、その弊害については実はまだあまり知られていないということも知った上で、どのように付き合っていくのかをしっかりと見極めていく時代に来ているようです。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会