学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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今この記事を読まれている恐らくほとんどすべての方々が経験してきたであろう「詰め込み教育」が、今まさに大きく舵を切ろうとしています。過去にはゆとり教育という一過性の微調整があったとは言え、結果としては日本の教育の本質的なことはこれまで何も変わってはこなかったわけです。
時事的なニュースで話題になっていたので既にご存じの方もいるかと思いますが、令和6年度の大学共通テスト(昔のセンター試験)から、高校の新学習指導要領に対応して「情報」と「公共」という科目が新設されるという報道がありました。
「公共」ではSDGs(持続可能な開発目標)から課題を選び、資料を読み取る問題などが出題されるようです。つまり、頭に詰め込んだ知識(暗記)だけでは回答できない、自らの考えも問われるような問題が出題されるのではないかと思います。
“幼児期の学びは主体的な遊びから得られる”ということを基礎に2017年の改訂が行われた幼稚園教育要領・保育所保育指針等からはじまり、生きた学び=アクティブラーニングの重要性が明記された小学校学習指導要領、そして中学校、高校と順を追ってこれまで改訂が進んできたわけですが、いよいよ知識詰め込み型の偏差値教育から、新たな教育的評価がなされる時代に突入していくことになります。生きる力・社会的スキル・調整力・協調力といった、乳幼児期に大きく育てるべきとされている「非認知能力」に通じる一人一人の人間的な、本質的な部分が問われるような方向にも進んでいきそうな気がします。もちろん今後の試験で問われる資質によって、その人の人間性が否定されるという結末になることは注意が必要ですし、慎重に進めなければならないとは思います。「どのように頭を使うことができるのか」「人だからこそ出来得ること」といった、コンピューターや人工知能が得意とする「暗記・知識の蓄積」とは切り離された、“人間だからこそ”にスポットを当てた学習が、より求められてくる時代になるでしょう。
先日読んだ本【毎日読みたい365日の広告コピー ライツ社】の中に
「ゲームでしか、冒険を知らない大人になるなよ(栗島観光協会ポスター 2010年 コピーライター:日下部浩一 新潟博報堂)」
というものがありました。
まさに今の子どもたちに特に不足しているものは“実体験”だと思います。例えば「火傷をするから触ってはいけない」と、火から遠ざけられる。「怪我をするから登ってはいけない」と、高さから遠ざけられる。
このようにして、多くのリスクから遠ざけられ続けた子どもたちには、火の本当の怖さも、熱さも、火傷の痛さも、擦りむく痛さも、許容範囲を超えた高さに対する恐怖心も経験できない。もちろん大けがをすべきとは到底考えていませんが、小さな実体験の積み重ねで本当の危険に対する危機管理能力が積みあがるはずの“実体験”からとにかく遠ざけられることにより、社会的に未成熟な経験不足に陥りやすいのだと感じます。
そういう点でいえば、これから大人になる子どもたちが今後の時代を切り開くために最も強みとできることは、タブレット端末から得られる疑似体験ではなく、一人一人が自らの経験を元に得た知識を活用していくこと。つまり経験の量が人生を左右すると言い切ることもできるように思います。あけぼのほりえこども園での生活においては、一人一人の子どもたちがどうしても家庭では経験できない“実体験”で彩られるような、そんな環境を更に意識しながら共に生活することを大切にしたいと思います。火の熱さ、火の本当の価値を実体験によって感じられる一つの取り組みとして、最高気温が10℃を下回るようになったら、エントランス近くに火鉢を置いて暖を取る準備を進めています。コロナ禍でなければ掘ったばかりのサツマイモをそこで焼き芋にして頬張りたい。そんな取り組みの実施はまだもう少し先になりそうですが、できるものをできる限りに、実体験で埋め尽くしていきたいと思います。