園の下の力持ち

2022.05.09
マスクと子どもの発達

マスク生活も2年を超え、巷では新しく採用されて入社した3年目までの社員の顔を良く知らないなどという会社があるようですが、乳幼児教育を司る施設にとってこのことは決定的に問題の質が異なります。

近年は発達障がいによって他者の気持ちを表情から読み取りにくいとされる子どもが一定割合存在するという現実がありますが、それでも表情を見せ合いながらいい事悪い事、嬉しい事悲しいことを共有するために粘り強く表情を使い分け、それを子どもたちも良く見ることで感情の変化を知っていくことができます。更に、乳児ともなれば食事の介助において口元をもぐもぐしているところを見せられないままに食事を介助しなければならず、その他の場面でも言葉を話せない小さな子どもに対して意思の疎通を目元の表情のみに頼らざるを得ず、今後の発達に大きな懸念があります。近大マスクのような口元の見える透明マスクを着用して何とかこのような問題を解決しようと試みてみても、それはマスクとしての意味をなさないため、コロナの陽性者が一人出ればマスク着用無しでの濃厚接触扱いとなり、途端に自宅待機となります。

ある報道でマスクを外した生活に戻れるかという質問に、「ズボンを脱ぐくらい恥ずかしい」と答えている大学生がいました。一方で韓国では公共の場所でのマスク着用の義務化が撤廃されたそうです。ある意味2年間、殆ど同居家族以外に対しては世界中で仮面舞踏会を行ってきたわけですから、マスクの無い生活の方が違和感を持つことも一定理解できますが、最終的にはきっと誰もがマスクの無い生活を望んでいることに他ならないと信じたいものです。

そんな世の状況の中でコロナが始まって以降様々なコロナに対する考え方に触れてきました。マスク着用の是非はもちろんのこと、ワクチンのこと、実際に罹患した人の症状の違い含め、それを超えてなおコロナの捉え方は様々だと感じます。感染症対策も乳幼児施設で出来得る範囲でしっかりやってきているつもりです。職員の私生活においても感染症予防の徹底を続けてきました。この大阪市内、そして園内のコロナの感染状況が未だに安心できるような状況でない事は大きな問題ですが、それでも、僕は子どもたちと保育中の職員のマスク着用はそろそろ無くしたい。そう考えています。医師ですら見解が分かれます。答えは未来でしか分からないことなのでしょう。

嬉しい時はうれしい顔を、悲しい時は悲しい顔を見せ合う生活に解放感すら感じること自体が3年前には考えられませんでした。ただ、向かい合う人の鼻も口も頬っぺたの筋肉の動きも全てが子どもたちの発達のために必要な要素なのだと思います。その経験が人に優しくなれたり、自分の感情の出し方を調整したりするとても大切な経験に繋がると思うのです。

これから少しずつ、何ら法律で定められたわけではないマスク着用という同調圧力に見事に従う日本人の一人として、保護者の皆さんと状況を見ながら議論していかなくてはなりませんが、そろそろ子どもたちの健やかな発達のために、子どもたちのために、園内でのマスク非着用に舵を切らなければいけないと考えています。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会