学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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2022年6月末、政府の基本対処方針というものが変更となり、学校などにおけるマスク着用ルールの見直しが行われることになりました。そのタイミング・内容を確認して、当園のマスク着用ルールも見直しを図ることにしました。子どもたちのマスク着用、そして豊かな食事という時間にパーテーションで区切られ、話すことを控えるようなことが子どもに限らず良いことにつながるはずがないという認識はずっとありました。
マスク着用推進派とマスク非着用推奨派、大きく分けてこの二つの価値観の中で、我々が原点回帰すべきことを再確認し、”子どもを中心に決める”という判断基準を元に、子どもも、そして保育を実践する職員にも『マスク着用の自由化』という新たなルールを設定しての日々が始まりました。着用については全てそれぞれの主体的な考えに任せる。ただし、この乳幼児期の子どもたちが相手の微妙な表情の変化を見逃さず、他者の気持ちを推し測ったり、気持ちに寄り添うような感情を生むためには、表情から読み取る力が育たなければそれは実現されない。顔の半分を覆うマスク越しに目元だけの微妙なニュアンスでそれを子どもたちに育てようとすることがまずもって達成されないことはこれまでの3年間で痛いほど感じていました。伝えたいことが”普通の子どもにも”なかなか通じない。これが現実でした。
ただし、園内でのマスク着用の自由化はしても、マスクの非着用をルール化することは一方で憚られました。多少咳が出ているエチケットとしてマスクを着用したい日もある。同居家族との関係や、それ以外の多くの理由でもマスク着用したい場合もある。そのような場合の判断は適切にできるほうがいい。職員間で多くの議論と検討を重ね、マスクの自由化というルールを進めました。
6月末から始まったマスク自由化から約4か月が経ちました。
日々の生活の中で職員から聞こえてくる声は、「話が通じるようになった子どもが多くなった」という事実です。今まで一生懸命伝えてもなかなか伝えたいことが伝わらなかった子どもが、同じ表現でも明らかに伝わっている内容量が異なっているという確かな手ごたえがあるのです。私自身も子どもたちと話をするときにはマスクを取って話をするようにしているので、この実感は確かにあります。もちろん、コロナを含めた感染症拡大へのリスクがあることは事実です。それでも、一時のリスクと今後続く発達への影響のどちらを大切に考えるのか。子どもたちにとって何が大切なのか。
我々”あけぼの”という場所は、ブレないそのような判断基準の中でこそ進んでいかなくてはいけないと再確認しています。この園で過ごすすべて人の豊かな表情が溢れ、それが目の当たりにされる毎日が、本当は当たり前にしてこの時代にどれほど貴重で豊かなことか、心の底から実感しています。もちろん不都合もあります。それでも、常に子どもたちが価値の中心に置かれる。これこそが真実だと思います。あけぼのだけに限らず、すべての子どもたちが同じような価値の中に置かれて大切に、少しでも早く同じように判断されることを願います。