学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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わたしたち“あけぼの”という場所は、常に子どもたちを価値の中心にして物事を考え、決めていきます。それは、時として大人にとって都合の悪いこともあります。大人が頭ごなしに子どもたちを強い言葉で支配し、一人ひとりの気持ちを置き去りにしてでも、大人のイメージする活動や時間軸に従わせる方が、事実大人のイメージ通りに物事をスムーズに進められる側面は確かにあります。
ではなぜ、敢えて乳幼児期の子どもたちを中心に物事を考える必要があると考えているのか。それは、子どもたちの脳の発達段階に理由があります。
脳の発達において、感受性期が比較的早く訪れるのが、大脳皮質の「聴覚野」と「視覚野」です。これらの脳部位の感受性期は生後数か月から始まり、1歳前くらいにはピークを迎え、就学を迎える6歳くらいには成熟に達するとされています。目の前にある「それが何か」を認識したり、耳から入ってきた音を聞き分けて認識する機能が育つとても大切な時期です。そのような脳の発達段階の中で、子どもたちは目や耳から入ってきた環境からの情報を、記憶などと照らし合わせ、それが何を意味しているのかを理解できるようになります。そして、それを言語化したり、意思決定して行動に移すことによって、社会の中での振る舞いを身に付けていきます。
一方で、思考・判断・注意・計画・自己抑制・コミュニケーション等、社会活動で必要となる要素を司る、コントロールするのが、前頭前野と呼ばれる部位です。この前頭前野は25歳くらいで成熟期を迎えます。
目や耳から入ってきた情報を処理・判断していく際、乳幼児期の子ども達は、まだ情報を正しく処理して判断していくことができない前頭前野の未熟さがあります。これを読まれている方の中にも、反抗期や思春期に、理解できない情緒の乱れを感じたことがある方がいるかもしれません。実はこれは、25歳頃を発達のピークとする前頭前野にあって、理性よりも感情に素早く反応してしまう難しい状況が表出している状態なのです。普通はなぜ、そのような情緒が不安定な状態が、思春期の成長段階で起こるのか理解に苦しむことが多いと思います。実際、誰しもそのような発達段階を通ってきたものの、なぜだか分からないモヤモヤ感や不安の原因が、自分達自身にも分かるものではなかったためです。「どうして分からないの」「何度言えば分かるの」という言葉をつい使ってしまいますが、実は本人たちにもよく分からない状況が、脳の発達段階で訪れているということの証なのです。
このような脳の発達を理解していただくと、日々の生活では、子ども達一人ひとりの日々の「納得」を大切に過ごしていくことが必要になるというところに行きつきます。自分が視覚や聴覚から得た情報を元に、子ども達自身も様々な葛藤や匙加減の中で行動を決定しています。それにNGや制限を突きつける大人は、まず、子どもたちの心の中でどのようなことが思考されているのかを覗くために、大人が子どもたちの気持ちに寄り添いながら考えを吸い上げたり、言葉にならない想いを言語化して通じ合う。そしてその上で、子どもたちが納得する理由をきちんと添えて大人の言い分を伝える、ということが正に必要なのです。
中学時代や高校時代、誰もその理由を言う事の出来なかった校則というものが存在していた経験はないでしょうか。なぜ耳に髪がかかっていてはいけないのか。なぜ下着の色が白でなければいけないのか。まだ前頭前野が未成熟な思春期の、“納得の伴わない制限”の中で、ただその制限を受け入れたり、我慢するという考えを受け入れざる得ない子どもたちは、はっきり言って不幸です。
だからこそ、乳幼児期から、私たちは“納得して生活すること”を大切にしたいと考えます。理由の伴わない制限は、子どもたちから、自ら考える思考を奪うことはあっても、主体性は育てません。
このような考え方の下で、わたしたち“あけぼの”は粘り強く「子ども中心」という考え方を貫き、将来にわたって必要となる「問いの質」の高い子どもたちを育てたいと考えています。