園の下の力持ち

2023.07.03
セイセイケイエーアイ

2023年に入り、セイセイケイエーアイ(生成系AI)という、これまでの常識を更に超える技術が広く利用され始めました。代表的なものとして、検索した内容をいち早くまとめ上げるChat GPTや、文字情報からこれまでに存在しない画像を作り上げるStable Diffusionといった進化系AIです。
何がこれまでと違うのか。大雑把に言えば、Deep Learning(ディープラーニング)と呼ばれる、人の脳の働きを元に作り上げられたプログラムによって、インターネット上に溢れる情報を瞬時に最適化し、質問やリクエストの意図に近い回答を「適当に」行えるようになったという点です。
ここで話題にされるのが、インターネット上の情報とは全て、誰かがインプットした情報で構成されていること。そしてそれぞれのAI開発会社が、その中から都合の良い情報を取捨選択して採用するか・しないのかを決めている、つまりバイアスがかかるという点です。欧米では既に、AIに対する規制の動きが出てきていますが、2023年2月にある人が、Chat GPT(OpenAIという会社が開発)でトランプ元大統領のポエムを書けと打ち込んだところ、“党派的なものや政治的に偏ったコンテンツを作成するようにはプログラムされていない”として、その要求が拒否されたというのです。それに対して、バイデン大統領のポエムを書け、という要求には、真実の心を持つリーダーなどと、数行に亘ってポエムが書かれました。(※既に世界中でこの情報が広がり、現在ではプログラムが修正され、トランプ元アメリカ大統領のポエムもしっかりと書くようになっています)
つまり、我々は日ごろから、インターネット上で示されることは常に正しいことが書かれていると錯覚し、それらの情報で自分の行動を決めてしまうということに、どれだけのリスクがあるかを知らぬまま、社会生活を送っていることになるのです。ある種、戦時下でプロパガンダに人々が影響を大きく受けてしまうのと同じ、人間の本質的な行動であるともいえます。

とはいえ、情報が溢れだす急速な時代変革の中で、人が人としてAIに間違いなく勝るものは、“身体的感覚”であると考えられます。昔はAIと言えども新たなものを生み出すことはできない、クリエイティビティとは人間特有の能力だ、とされていたものが、今や人間の付与する少しの情報をヒントに、AIがクリエイティブな創造活動を行えるようになりました。従って “人間だから”という事の出来る要素は、まさに身体的な感覚を有していることに関連したものしか残されていないように思います。
そして、身体的な感覚というのは即ち、自分が体験することでしか知り得ない知識です。インターネットから集めてきた莫大な情報を持ち合わせていたとしても、実際の経験に紐づかない情報は、人の知能・知識とは呼べないのです。

従って、これからの時代において、人間の真の知能というものは、実体験に基づく情報と、インターネット上に溢れる情報を合わせたもので作り上げられる時代になりました。自分の経験だけでも、インターネットの情報だけでもない、両者を統合して真の知能と呼ぶ時代。経験の乏しさから、自らが採用する情報に不適当なものが含まれれば、それぞれのシーンで最適な判断や行動には結びつかなくなります。だからこそ、人は多くの実体験をとにかく積み、自らの経験から情報を適切に取捨選択できるようになることが、今後改めて求められるようになるのだと思います。幼児期までが、親がインターネットの情報を子どもたちに制限をかけられる時間です。このような時代の背景を正しく理解した上で、タブレットやスマホとの共存生活のルールを設定できると良いですね。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会