園の下の力持ち

2023.08.01
ジャガイモのはなし

あけぼのほりえこども園の屋上部分にあたる場所には、敢えて雑草の苗を植えて小さな虫や鳥を呼ぶための「空庭」と、野菜などを栽培するための「畑」がそれぞれ設えてあります。
毎年、そこに年少から年長まで各クラスがそれぞれのクラスの話し合いを元に、季節に合った思い思いの野菜を育て、収穫し、そしてクッキングを展開します。今年はとまと・きゅうり・なすび・枝豆・オクラ・とうもろこし・ピーマン・スイカなどなど、実にバラエティ豊かな栽培活動が展開されています。
ピーマンは、一部の子どもたちにとっては毛嫌いするような食べ物だったりもしますが、職員が工夫を凝らして、今年はピーマン唐揚げやらピーマンピザ、ピーマンケーキといった風に、ピーマン独自の苦みをうまく消しながら素材を使って行くようなクッキングが展開され、子ども達もむさぼる様に食べていたのが印象的でした。

そんな中、2号幼児クラスである「きりん組」も、教育時間のクラス編成とは別に、年少から年長までの3学年の縦割り保育を通して栽培活動に勤しんできました。そして大豊作となったのが、タイトルにもした「ジャガイモ」です。
収穫したじゃがいもの大量さもさることながら、消費するために色々なクッキングをしてみるものの、全然無くならない。ということで、職員会議で残っているジャガイモの使い方についてが議題に出されました。
「袋に詰めて保護者にもってかえってもらうのはどうだろう?」
「やっぱり子どもたちが一生懸命無農薬で育てた食材だから、園のごはんの材料にしたらどうかな?」
「ひたすらクッキングを続けるべきか…」
などなど、活発な提案がなされましたが、私はそうしよう!とすぐにOKを出しませんでした。

遡ること三十数年、小学校5年生の時に「生物係」を担っていた私は、小学校の畑が使用されずに空いていることに気が付きました。(ちなみに教室の中にそもそも生物はいませんでしたので、「生物係」の存在意義について非常に思い悩んでいた事実があったことを記憶しています)そこで、担任の先生(サッカー部の顧問)に畑を使っていいか確認したところ、快くOKをもらい、何故か私はそこに自分のお小遣いで買ってきた大根の種を植えました。なぜ大根だったのかは、今でも分かりません。
毎日毎日、畑の様子を見ながら水やりをし、本を読んで“間引き”を知り、実践に移し、少しずつ大きくなってくる大根に愛を注いでいきました。気が付けば立派な葉っぱが広がり、これは絵本「大きなかぶ」にも匹敵する位大きなのができたんじゃないか!?と、ちょっぴり掘ってみたら、ちゃんと大根が出来てる!という感動と共に、同じく「生物係」ではあったものの全く気乗りしていなかった2人の友人を、半ば強引に手伝わせて、大根を収穫しました。
実際出来上がった大根はというと、長さ20㎝程度の小ぶりな大根で、全くもってスーパーに売っているそれとは異なりましたが、どこかで聞いた“無農薬だから”という売り文句を掲げて、職員室へ突入。一本300円もする高価な無農薬大根を先生方に購入してもらいました。今から考えると顔から火が出そうなほど恥ずかしい行動ではありますが、学校の畑を活用して一人大根を育てていた小5の少年への眼差しは温かかったことを覚えています。
更に、それでも売れ残ってしまった大根を売るべく、たくさんの友達の家に突撃して、色々なお母さんにも購入依頼。さすがに断られることもありましたが、何とか収穫した大根を完売させることが出来ました。そして…実は売り上げは2万円を超えていました。大金です。
何故この行動に出たのか。実は「生物係」として、教室に生き物がいた方が良いよね、という単純な動機がこの行動の原点にありました。努力を続けた末に2万円という大金を手に入れた小5の私は、クラスにアンケートを取り、なんとそのお金でハムスターを飼育することが決定。ケージからエサ、そしてハムスターのハムちゃんとコッペちゃん(コッペパンみたいな色だった)の二匹をペットショップで購入し、小学校6年の卒業まで、クラスの飼育動物として飼育をした、という経験がありました。

話を戻します。職員会議での議論が進む中で、
「実際に売って、お金という概念を知ったり、それを元に何かを買うという経験をさせてはどうか」
という意見が出ました。雰囲気的には「さすがに本当のお金を扱うのはよくなのではないか…」という感じもありましたが、「いいね!」と反応してしまっている自分がいました。正直、良いのか悪いのか、子どもたちの育ちの段階としてはもしかすると、早すぎる社会経験かもしれない、という想いもどこかにはありました。ただ、言ってしまったからには、面白くなれ~と、活動を見守ることに。
そこからは子どもたちも忙しくなりました。スーパーや八百屋さんに出向いて行って、実際に売られているジャガイモがだいたい幾らくらいで売られているのか。袋詰めされている袋には何やら白と黒でできたバーコードと呼ばれる暗号のようなものがあるぞ、レジで買う時はその暗号みたいなところに機械を当てると「ピッ」と音がして値段が出ているぞ…などなど。年長児を中心に、園を飛び出して社会と繋がりを持ちながら、普段の保護者との買い物とは異なる視点で学びを得ていたように思います。
綺麗な色のリボンで袋詰めされたジャガイモは、お手製のバーコードが貼られ、制作コーナーで仕上げられたバーコードリーダー付のレジも机の上にセット、ジャガイモ屋さんの準備は万端。一袋200円(マーケットリサーチが完璧すぎて、値段で恥ずかしい思いをすることはなさそうです)という値段がついて、後はお客さんを待つばかり。お客さんを探して子どもたちは園内探検。先生や保護者に声をかけて購入してもらい、結局2日間で7600円を売り上げて完売!レシートまでもらえました。素晴らしい…。
ということで、この夏は販売したジャガイモで得たお金を、こども会議でどういう風に使うのかについての議論が繰り広げられていく予定です。7600円というお金の価値を、どんなものがいくつ買えるのかなどを知りながら、まずは子どもたちと数や数量についても学びます。

 
そしてそのお金の使い方について園長からリクエストを一つ。
「お菓子を買ってみんなでお菓子パーティをしておしまい、にせずに、是非クラスでずっと使えるようなものを買えるようにみんなで考えて欲しい」
という難しい投げかけに、この夏、子どもたちはどんな結論を出すでしょう。ワクワクが止まりません。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会