学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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今社会では子育て中の人に対してこのような表現が使われることがあります。シシャモなら良いはずのこの表現は、人に対して使われる時、残念ながら良い意味で使われないようで、「育児を理由に仕事を切り上げたり、育休を取る職場の同僚」を揶揄する言葉のことだそうです。私も含め、あけぼのにも沢山子育て中の職員がいて、“子育て中のお互い様”だけでは確かに、うまく処理しきれない状況に直面する場面もあるのは事実です。
ただ、個人的には、子育てというものを通じて親としても人としても成長させられる機会を得られていると考えている点では、(大変なことは本当にたくさんありますが)本当に毎日が幸せだと感じますし、子どもがいなかった時には分からなかったことが沢山分かるようになるという実感もあります。ファミリーレストランのメニューや工夫、ショッピングセンターのオムツ交換台のある男子トイレ、公共交通機関の優先座席など、子育てを通らなければ気が付くことの難しい、社会の優しさや有難さみたいなものを感じることもよくあります。もちろん、望んでも子どもを授かれない人たちもいらっしゃるので、一概に子育ての素晴らしさや、子育ての間は色々と大目に見て欲しいという気持ちを社会全体に押し付けるということはできませんが、少なくても子育てに優しい社会が無ければ、未来を担う子どもたちが豊かに育つ環境は制限されてしまうと思います。
今回の「子持ち様」という揶揄は、残念ながら子を持つ人と子を持たない人との分断を浮き彫りにしている印象です。
では、子育て世帯が力を合わせてそんなものを跳ね飛ばそう!子育て世帯に優しい社会の実現を!と言いたいところですが、日本では婚姻数と出生数の低下によって、子どものいる世帯数が減り、2022年の「国民生活基礎調査」によれば、18歳未満の未婚の子どもがいる子育て世帯の割合は、たったの18.3%となったそうです。つまり、5家庭に1家庭しか子育てをしている世帯ではないことであり、子育て世帯はむしろ全世帯からすると少数派と言い換えられる状況に陥っています。そりゃ少数派が、仕事を子どもの体調不良やら育休で穴を開けたら、その他多数の子育て世帯ではない人たちからの厳しいご意見が社会一般の考え方のように感じられて肩身の狭い思いをすることになるのは不思議ではありません。
更に、ある政治家の方からお話を聞いて、なるほどと感じたことがあります。それは、子育て世代と高齢者、どちらが票になるか、という話です。子育て世代は時間が経つと子育てが終わる。高齢者は死ぬまで高齢者。ということは、数年で生活のフェーズが変わる子育て世代に向けた政策を打ち出すよりも、医療や介護といった高齢者への政策を掲げて選挙に向かった方が、よっぽど当選確率が上がるという話です。現に子育て世代は子育てが終わったら、子育て中に良いなと思った政策よりも、その次の生活が保障されたものに興味関心も向かうでしょうから、選挙戦の戦略として考えれば、ある意味でこれは自然な流れなのだとは思います。
とはいえ私たちの業界からすれば、子育て世代や、それと関連するような乳幼児への政策を掲げて頑張っていただけるような議員さんを応援したくなるのですが、子育て世代への好感度は上がっても継続した票にはならない、という観点で見ると、子育て世帯への追い風はなかなか吹いてきそうにはありません。(岸田総理が掲げた異次元の子育て政策はどこへ行ったのでしょう…)
未来を担う子どもたちのために、日本という国は大きな転換点を迎えているはずです。この機会に、誰もが当たり前に、同じように働かなければならないという前提も含めて、多くの人が納得できるような社会構造になるように願いたいものです。