学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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日本における学校教育は、歴史的な背景や社会の変化に強く影響を受けて進化してきました。意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、学校教育は社会のニーズに応じて柔軟に進化しなければならないものです。
戦争を経験してきた日本では、かつて日本国民として一律一斉に動くことが求められました。学校教育では特に、そのような軍人予備軍となる子ども達に、違和感なく指示命令に従って生活することのできる人材教育が行われてきました。
戦後の高度経済成長期には、工業化や技術革新に対応するための人材育成が強く求められました。日本製品が均一で高品質であることが世界中で高い評価を受けて、日系メーカーが台頭しました。それは、裏を返すと日本中の工場で工業製品の組み立てを正確に行うことのできる労働力としての均一さが、教育にも求められたことでもあります。
その後のバブル経済期には大学進学率が急速に上昇し、激しい受験競争が問題化しました。しかしバブルの崩壊と共に、知識を単に詰め込み、知識の量だけで評価される「偏差値教育」や「詰め込み教育」が批判され、知識重視の教育から個性や創造性を育てる教育への転換が模索されるようになりました。
そして2000年を過ぎた頃から、グローバル化が進む中で、日本でも国際社会で活躍できる人材育成が重要視されるようになりました。一方で、世界に目を向けると“多様性”という課題を多く抱えた国々の存在と、そこに対する様々な考え方が見えるようになってきました。これまで日本の社会ではあまり考えてこられなかった“多様性”という問題と、 “みんなが同じであること、同じようにできることが良い事“という考え方では、これから日本が進もうとするあるべき未来に対して、多くの障害が見え隠れするようになったわけです。
これらの時代的な背景をきっかけとして、日本の教育にも個性や創造性を育む教育が求められるようになりました。その人らしさ、を十分に発揮できる人材育成です。この具体的な教育手法として、小学校以降ではアクティブラーニングや探究型学習の導入が進み、生徒が自ら考え、問題を解決する力を育む教育が推進されるようになりました。同じように、幼児教育では、遊びを通した体験型の学習が大切であり、その後のアクティブラーニングや探求型学習の基礎となっていくもので、小学校以降のいわゆるお勉強(知識)を先取りする早期教育とは一線を画すという趣旨が、教育要領にもきちんと明記されました。
では実際、乳幼児教育の世界はどうなっているだろうかという視点で見渡してみると、いわゆる昭和の時代から続く「一律一斉」「一糸乱れぬ集団活動への参加」が良ろしい、と未だに考える風潮が根強いケースが多々見られます。時代遅れです。みんなと同じようにできない、園として“都合の悪い”園児を、園から退園させて自分たちの考える“あるべき子ども像”で揃え、その秩序を守ろうとするような園も未だに存在します。軍隊予備軍への教育にしか未だ対応できないことの裏返しです。恐ろしいことです。
あけぼのが多様な子どもを受け入れるのは、何も特別なことではありません。子どもたちが初めて経験する社会は、この乳幼児教育の場です。そしてその初めての社会である乳幼児施設は、社会の縮図であって、多様な人がいることが当たり前だと考えているからです。社会に出れば様々な人がいて当たり前。その“多様さ”から、乳幼児期の子どもたちを遠ざけ、都合の良い人たちの集団に詰め込まれるということがどういうことに繋がるのか。グローバル化や多様性の時代に、それが何を意味するのか。幼児教育を司る立場として、無責任であることに気が付くべきです。
どんな業界でも同じですが、常に時代の流れをきちんと読み取りながら柔軟に、そしてアップデートできなければ、その先の未来は先細りであることは明白です。教育に従事するということは、そのような意識を高く持たなければならない、非常に大切なものだと思います。日々学び続ける姿勢と、柔軟な思考を常に持ち続けていたいものです。