学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会
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自分が小学生時代にクラスに1人、なかなか学校に来れないクラスメートがいて、担任の先生に頼まれて友人数人と一緒に授業中(だった気がしますが)その子の自宅まで行って、一緒にTVゲームしたり話したりして、「明日は学校で一緒に遊ぼう」などと励ますようなことが何日か続いたら、根負けしたその子が学校に来るようになったという経験があります。小学生ではなく、こども園であっても、親や大人に言われるよりも子ども達同士の関わりの中でやる気を発揮するということは往々にしてあるので、あの時の担任の先生は子どもたちの力に委ねてくださったのだと今だからこそ感じます。(あの時の自分は、本当は授業を抜けて友達と遊べるなんて最高じゃないかと思っていただけの記憶もありますが…)
文部科学省が児童生徒の問題行動や不登校などの実態を調査した「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」を2024年10月31日に公開しました。この調査によると、病気や経済的理由を除き、心理・社会的な要因などで小中学校に年30日以上登校しない不登校児童生徒数は、過去最多の34万6482人で、前年度から47,434人(15.9%)も増加したとのことです。
不登校の理由って何だろう。
ぼんやりと、自分が子ども時代にぶつかったことで考えてみると、先生が嫌だ、友達関係で悩んでいる、勉強についていけない、何のために勉強しなければいけないのか分からない、給食がまずいのに完食しなければならない、いじめにあっている、学校がつまらない、夜遅くまで起きていて昼夜逆転の生活になり朝起きられない、こんなことが理由としては考えられたように思います。
では現代の子ども達はどのようなことが理由で学校に行けなくなっているのか。もちろん不登校は一人ひとり事情が違うので、上記のようなことも理由のとしては沢山当てはまるケースがあるのだと思いますが、あの頃以上に不登校が増えている理由にはどんなことがあるのか。
ある文献によると、以前に比べて不登校が多くなっている理由として、受験競争や学習ストレスにより学習意欲が減退すること・共働き世帯の増加や経済的問題により、子どもが孤立しやすい環境が形成されていること・若者の急激な社会変化への適応困難、自己肯定感の低さといった精神的な問題の増加も関係しているようです。更に、我々の幼小時代にはなかったSNSやインターネットの普及により、リアルな人間関係が希薄になり、オンライン空間での居心地の良い集団に属しているという感覚によって、学校に通うこと自体がストレスとなるケースが増えていたり、不登校であることを肯定する(もちろん不登校がダメであると言い切っているのではなく)YouTuberなどの存在も、不登校に対するハードルを下げる要因になっていると分析されています。
ただ、今も昔もヒトの脳が進化しているわけではないわけなので、理由は今と昔で少し異なってくるにしても、大人も子どもも学校への向き合い方の変化というのが大きいように感じます。
あるSNSでこんな言葉を見付けました。
「自立とは依存先を増やすこと」だと医師の方から聞いたことがあります。
何でも一人でしようとする人よりも、上手に人に頼ることができる人の方が精神的に自立しているということです。
「支柱が多い方が土台は安定する」のです。
SNSやインターネットの中に依存先が限定されることで、自分とは異なる意見に対する耐性が弱まり、自分を肯定してくれる空気感にどっぷりと浸かってしまう。子ども自身がそうではなかったとしても、概ね最初の依存先である親自身がそのような渦の中にいれば、子どもにはその感覚がしっかりと移っていく。人間は弱い存在ですから、それはあくまで仕方のない事でしょう。それでもリアルな集団の中で、多様な意見や表現を自分なりに消化していくことで、この不登校の問題が少し変化するのではないかと感じています。そしてそのようなリアルな関係性の中で、依存できる相手を沢山見つけていく。これこそコロナ禍で少し増えてしまったオンラインの便利さの次に、敢えて獲得していかなければならないモノのように感じます。
そしてデジタルの影響がまだどちらかと言えば軽微な乳幼児期にこそ、多くの依存できる他人を集団生活の中で見つけていく。その中で私たちが出来得ることはどんなことがあるだろうかと思います。
あけぼのには、「気持ちの良い迷惑の掛け合いをしましょう」という子育てに対する考え方があります。大人も子供も、依存先を増やすことは、喫緊の課題です。