遊びの匠

2021.02.11
は・れ・の・ひ

この年中の子ども達の目には自分達でお話を進めていく年長児の姿はどう映るのだろう?

もしかしたら、「自分もあんな風にできる!!」という根拠のない大きな自信を抱きながら見ているのかも。でも、少しずつ自分と他の人の区別がつくようになってるからこそ、いざ舞台に上がると他人に注目されているという気持をどう扱っていいのかわからず、友達にちょっかいかけたり、固まったり、転がってみたり。

お話あそび会がはじめましてのこの年少の子ども達には、何とか自分を保ちながら演じようとする気持ちと恥ずかしい気持ちの中で揺れ動く年中児の姿がどう映るのだろう?

もしかしたら、「楽しそうだな~」「あんな風におもいっきりはじけていいんだ!」なんて思いながら、演じる子ども達の裏側の気持ちなんて気にも留めず、目に映る光景を自分の中にストレートに吸収してるのかな。そんな年少の子ども達。いざ舞台に上がるとなると、目の前の大好きな先生と日頃から楽しんでいるストーリーの世界に吸い込まれて、自分がまさか舞台の上でお話あそび会をしてることなんて、誰かに見られていることなんて忘れてしまう(知らない)ぐらいなのかもしれない。

そして、この本番ギリギリまで自分の役を決めきれない年長児の目には、自分のクラスのお話あそびがどう映るのだろう?

自分と他者が明確に区別できる。そして自分の得意、不得意がわかると同時に、周りの友達のそれもわかる。さらには先の見通しが持てることや友達が抱く感情を予想できるように成長してるからこそ、色々な想いが胸の中をぐるぐる駆け巡り、自分の役を決めかねているのかもしれない。(この男の子は最終的に大道具のお月様の満ち欠けを担当するという、彼らしい役割を全うして彼らしいあけぼの生活最後のお話を終えました)

それぞれの成長過程の中で大きな意味を持つこのお話あそび会。

ただ、例年と違うのは保護者をお招きして行われる「お話あそび会当日」が無かったということ。そしてそれは、我々保育者が保育を行う上で非常に大切にしている”はれのひ”というスパイスを保育の中で使えないことに繋がるはずでした。

幼児期における”はれのひ”というスパイス。これは非日常の環境の中で”見られる”という経験から様々な気持ちに出会う中で自分を発見していく場であり、日常では味わえないすごく大切なスパイスと言えのかもしれません。カレーで言うとガラムマサラ的な位置。違うかもしれません。

1月上旬。お話あそび会を準備する段階で職員が時間をかけ話し合ったのは、お父さんお母さん達が自然と作り出す”はれのひ”というスパイスに置き換わる、子ども世界の”はれのひ”という新たなスパイスをどのように作り上げるか。

準備段階では私を含め職員の心の中でも「それはさすがに無理かも」なんて思っていたのも事実。

そんな、ノンスパイスになると思われていた今年のお話あそび会でしたが、蓋を開けてみるとそこには先生達の経験と周到な準備、そして”信じるに値する”子どもの力によって創り上げられた、我々職員の想像をはるかに超えたスパイシーな時間になりました。

当初、観客になる子ども達がおしゃべりしてしまうことや動き回ることが”はれのひ”を作り上げる上では妨げになることを懸念していましたが、間隔をあけて子ども用の椅子を並べ、チケットによって席を指定する、いわゆる映画館方式にすることで、子ども達の見ることに対する驚く程の集中力を引き出すことに成功。

そして、年長、時には年中の子ども達が司会を務め、あけぼのシアター内でのお約束事も子どもの口から伝えられることで、驚く程にみんな守る。

そして、お話あそび会前日には園内にチケットオフィスが登場し(保護者の皆様には動画を配信させて頂きました)、子ども達が手作りのお金を握りしめ指定席の件を買い求め、舞台に上がるだけではなく、”見る”ことへの期待感を高める。

迎えた当日。子ども達の力と先生達の準備のおかげでガラムマサラもアウトドアスパイスほりにしをも超える程、スパイシーな”はれのひ”がそこには広がっていました(動画配信で少しでも伝わっていれば幸いです)。

もちろん、この日を楽しみにしていた保護者の目線に立てば、この学年では一生に一回のお話あそび会をその場で見ることができなかったことについては申し訳ない気持ちでいっぱいです。

ただ、子ども達の目線に立てば、例年と変わらない。いや、もっと深く輝く子ども達の世界が広がっていたんじゃないかな。

そしてなにより、「日常の保育の延長線上にある」という本来の行事の在り方を再認識させられる瞬間でもありました。

もう一つ言えば、観客になるひとり一人の子ども達が圧倒的に肯定的な目を持っているということ。疑う余地もなく。

そう考えれば大人と子どもという切り分け自体が間違っているんだ。みんな一人の人として完成されている存在(大人の方が劣化しているのかもしれない)。そして、それを生かすも殺すも周りの人(大人)が作り上げる環境と関わりなんだなと。

また今回も大きな学びを与えてくれたのは子ども達。いつもやっぱり子ども達から学ぶことが大きい。偉大だなー。こんな世界だけど毎日一緒に生活させてもらえることに感謝しかないです。

答えはいつだって子どもの中にあるんですね。

昨年度はこのタイミングで一年が終わったんだなーなって。メインディッシュを味わう前に。時が過ぎるのは本当に早い。

ここからの充実感に溢れた子ども達と保護者、そして先生達の生活がなんとか守もられますように。

一日一日子ども達に感謝を伝えながら大切に生活したいですね。

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学校法人あけぼの学園/社会福祉法人あけぼの事業福祉会